海外デスクレポート
2017年3月17日
中国/中国における個人の国外送金の実務

執筆:中国担当
中国では近年、外貨管理規制の強化に伴い毎年のように制度改正が行われ、国外送金に必要な手続きが複雑・煩雑化している状況です。本稿では、個人が中国から国外送金を行う際の実務についてご紹介します。
なお、下記取り扱いは上海市の中国建設銀行の窓口にてヒアリングを行い確認したものであり、実務を行うにあたっては、必要資料等の情報について手続きを行われる各銀行・税務局等の窓口にて確認を行うことをお勧めします。
人民元から外貨への換金制限
中国では個人が人民元を直接海外に送金することが出来ないため、人民元を外貨に換金する手続きが必要となります。人民元から外貨への換金は、中国人と外国人で取り扱いが異なります。
(根拠法令:「個人外貨管理弁法実施細則(匯発[2007]1号)」)
(1)中国人の場合
1人当たり年間50,000USドルの年度総額管理制を採用しており、この範囲内であれば、身分証明書を提示することにより換金を行う事ができます。
(2)外国人の場合
中国で得た人民元収入(給与、不動産の売却収入など)は、納税証明などの証憑書類を銀行に提示することで外貨への換金が認められます。また、外国人が外貨から換金した人民元を再度外貨に換金する場合(逆換金)には、当初の換金日から24ヶ月以内に身分証明書と元の外貨換金証明書(※)を銀行に提示し、手続きを行う必要があります。
(※)換金額が500 USドル(空港では1,000 USドル)以内の場合には身分証明書のみで換金可能です。
中国からの国外送金制限
個人が行う経常項目(※)の国外送金については、外貨口座預金から送金する方法と、手許外貨現金を送金する方法があります。なお、中国人・外国人ともに取り扱いは同じです。
(※)経常的に行われる親族間の送金や保険料・コンサルティング報酬の支払い等を指し、投資にかかる取引を除きます。
(根拠法令:「個人外貨管理弁法実施細則(匯発[2007]1号)」、「人民銀行公告[2004]第18号」)
(1)外貨口座からの送金
① 一日の送金額が50,000 USドル以下の場合:銀行に身分証明書を提出することで国外送金が認められます。
② 一日の送金額が50,000 USドル超の場合:銀行に身分証明書及び証憑書類の提出が必要となります。
(2)手許外貨現金の送金
① 一日の送金額が10,000 USドル以下の場合:銀行に身分証明書を提示することにより送金が認められます。
② 一日の送金額が10,000 USドル超の場合:銀行に身分証明書及び取引金額の記載がある証憑書類、外貨口座からの現金引き出し証明などの書類を銀行に提出することで送金が認められます。
国外送金に必要な資料
(1)給与収入を送金する場合
① 労働契約書(原本)
② 外国人就業証(原本)
③ 個人所得税納税証明(原本)
④ パスポート(原本)
⑤ 給与証明(銀行の専用フォームに記入し、給与を支給する法人の社印の押印が必要。)
(2)不動産の売却収入を送金する場合
① パスポート(原本)
② 不動産売却契約書(原本)
③ 不動産売却後の買主に名義が切り替わった産権証(コピー)
④ 税務当局が発行した《服務貿易等項目対外支払備案》(原本)
※ 留意点
- 中国滞在期間中にパスポートの更新がある場合、失効したパスポートについても提示が必要です。
失効したパスポートを紛失した場合、中国の日本領事館の証明書が必要となります。 - 本人が自ら銀行窓口で手続きを行えない場合、公証人役場で委託書を公証する必要があります。公証の内容は、パスポート情報及び委託内容に関する事項です。この公証は日本の外務省及び中国の在外領事館の承認を受けなければなりません。
国外送金手続例
外国人が、上海市の不動産を売却して得た資金を日本に送金する場合、下記の手順により手続を行います。
【 ステップ1 】
不動産所在地の税務局窓口にて《服務貿易等項目対外支払税務備案表》の申請を行います。
申請の際には下記の資料が必要です。
① 送金者のパスポート(原本及びコピー)
② 他人へ委託する場合、委託者のパスポート(原本及びコピー)、公証した委託書(原本及びコピー)
③ 上海市不動産販売契約書及びその公証書(原本及びコピー)
④ 上海市増値税発票(原本及びコピー)
(注)2016年4月30日以前(営改増前)に売却した不動産である場合には、上海市不動産販売統一発票(原本及びコピー)
⑤ 不動産売却後の買主に名義が切り替わった産権証(コピー)
⑥ 関連税金納付済証明(原本及びコピー)
⑦ 個人不動産売却増値税申告表(原本及びコピー)
⑧ 売却済の新所有者名義の上海市不動産登記簿(原本及びコピー)
※留意点
申請書には中国から送金を行う銀行名及び送金日付を記入する必要があります。記入した銀行でなければ送金手続きを行うことが出来ません。また、記入した送金日付を過ぎて送金を行う場合には再度申請が必要になるため、スケジュールに余裕をもたせた送金日付を記入することをお勧めします。
【 ステップ2 】
銀行窓口にて国外送金の手続を行います。送金手続きの際には下記の資料が必要です。
①【 ステップ1 】にて申請を行った《服務貿易等項目対外支払税務備案表》
② 関連税金納付済証明(原本)
③ 売却済の新所有者名義の上海市不動産登記情報(不動産取引センターで取得)
④ 上海市不動産販売契約書及びその公証書(原本及びコピー)
⑤ 他人へ委託する場合、委託者のパスポート(原本及びコピー)、公証した委託書(原本及びコピー)
⑥ 送金者のパスポート(原本及びコピー)
※ 留意点
中国滞在中にパスポートの更新があった場合、更新前後のパスポート原本及び領事館が発行する同一人物証明書を併せて提出する必要があります。
- 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
- 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
- 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承ください。
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この記事の著者
大井 高志
税理士法人山田&パートナーズ 海外事業部 パートナー
亜瑪達商務諮詢(上海)有限公司 総経理
税理士・公認不正検査士2013年山田&パートナーズ入所。大手金融機関への出向後、2016年より上海へ赴任。中国系会計事務所への出向を経て2019年より現職。中国・香港・台湾における組織再編、進出・撤退支援、M&A関連業務、コーポレートガバナンス、不正調査対応、内部統制支援等のコンサルティング業務に従事。
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