税のトピックス

2025年3月21日

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外資系企業の昨今の改正点・留意点について

外資系企業の昨今の改正点・留意点について

1. はじめに

近年の税制改正では、親会社等が外国法人である外資系企業を対象に、課税要件を細かく設定するような内容や、日本の課税から外れる範囲がないように網をかけている傾向がうかがえます。本稿では、そのような外資系企業である内国法人および外国法人が注意すべき最近の改正内容について解説します。

 

2. 外形標準課税(法人事業税)の対象範囲の拡大

内国法人の事業年度末の資本金の額が1億円以下であっても下表(1)、(2)のいずれかを満たす場合には、外形標準課税(注1)が適用されることになりました。

表1事業年度末の資本金の額が1億円以下の場合

内容 適用事業年度
(1)以下2つの要件の両方を満たすとき(注2) 令和741日以後開始事業年度より
前事業年度に外形標準課税の適用があったこと
事業年度末の資本金と資本剰余金の合計額が10億円超であること
(2)以下2つの要件の両方を満たすとき 令和841日以後開始事業年度より
特定法人の100%子法人等であること
事業年度末の資本金と資本剰余金の合計額が2億円超であること(注3)

表1の(2)の要件①の特定法人とは、以下いずれかの法人をいいます。

 

表2特定法人の定義

資本金と資本剰余金の合計額が50億円を超える法人(外形標準課税の対象でない法人を除く。)

保険業法に規定する相互会社および外国相互会社

表2の①の要件では外形標準課税が適用されない法人が除外されています。したがって、外形標準課税が適用される内国法人である親会社等はこの要件から除外されません。

 

一方で、国内にPE(恒久的施設)を持たない外国法人である親会社等は、もともと法人事業税の対象とならないため、もし内国法人だったとしたら、外形標準課税が適用されることになるのか否かという基準により判定をすることになります。そのため、資本金と資本剰余金の合計額が50億円を超え、かつ資本金の額が1億円超である外国法人である親会社等は特定法人に該当することになります。今後は、100%親会社等である外国法人の資本金と資本剰余金の額も外形標準課税適用の判定要素となる点に留意する必要があります。

(注1)資本金の額が1億円超の場合等に、その内国法人が支払う報酬、純利子、純賃借料および資本金等の額等を課税標準として課される事業税(所得割額の他に付加価値割額、資本割額がある)
(注2)適用初年度は特例措置あり
(注3)資本剰余金を原資とする配当に相当する額を加算する措置あり

 

3. 消費税の納税義務の判定

新設法人の納税義務判定

消費税の基準期間(注4)を有せず特定期間における納税義務判定(下記③参照)で課税事業者に該当しない新設法人は、その資本金の額や親会社等の収入金額により納税義務の有無を判定します。

 

表3新設法人の納税義務
新設法人が以下いずれかの要件を満たす場合、消費税の納税義務者となる。

(1事業年度開始時に資本金の額が1,000万円以上である。

(2新設法人を50%超直接または間接に保有する親会社の日本での課税売上高が基準期間相当期間(注5)において5億円を超える。

(3新設法人を50%超直接または間接に保有する親会社の国内外の総収入金額が基準期間相当期間(注5)において50億円を超える。

表3の(3)は令和6年度税制改正により追加された要件であり、これにより新設法人の親会社である外国法人が過去に日本での課税売上を有していない場合でも、国内外の総収入金額が50億円を超える規模の法人である場合には、その子会社は設立初年度より消費税の納税義務者となります。

(注4)その事業年度の前々事業年度
(注5)親会社の事業年度で内国法人の基準期間に相当する期間

 

外国法人の日本での事業開始時の納税義務判定

外国法人も過去の日本での事業活動の有無に関わらず基準期間による納税義務判定が行われていましたが、外国法人は日本で新たに事業を開始することになった時に、上記①の新設法人としての判定を行うことになりました。これにより外国法人がその本店所在地国では設立後しばらく経過している場合にも、新たに日本で事業を開始した事業年度及び翌事業年度については、基準期間がない法人としてその事業年度開始時の資本金の額やその親会社の過去の取引規模により納税義務となるか否かを判定します。

 

 

外国法人の特定期間の納税義務判定

法人の基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合にも特定期間(注6)における課税売上高が1,000万円超である場合には納税義務者となりますが、この判定は、課税売上高に変えて、国内での給与等支払額の合計額で判定することもできます。ただし、外国法人については、この特定期間の判定を国内での給与等支払額の合計額で行うことはできなくなりました。外国法人の場合には、国外が本拠地であり国内での給与等支払額が生じず納税義務者から除外されることが多くあり消費税における事業規模判断の指標とすることが適当でないため改正されることとなりました。

(注6)前事業年度上半期
(注7)①、②と③の法人いずれも、適格請求書発行事業者を選択した場合等には判定に関係なく納税義務者となります。
(注8)①、②と③の改正点は、いずれも令和6101日以後開始事業年度から適用されます。

 

執筆:山田 順子 yamadaju@yamada-partners.jp

  • 山田 順子 

    この記事の著者

    山田 順子 
    税理士法人山田&パートナーズ
    パートナー 税理士

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