海外デスクレポート

2023年2月6日

日中間の契約にかかる印紙税の留意点 (中国)

日中間の契約にかかる印紙税の留意点 (中国)

中国には印花税という日本の印紙税に相当する税金が存在します。仮に契約当事者・課税対象双方が日本国内または中国国内に所在する場合であればいずれかの印紙税法に基づいて課税判断、税額の計算が容易ですが、契約当事者が日本と中国の場合、それぞれの税法で課税判断が必要です。

1. 日本印紙税法の課税対象となるか否か

契約書が日本国外で作成される場合(最後の署名捺印が日本国外の場合)には、日本の印紙税は課税されません。この場合、双方の契約書への日本の印紙の貼り付けは不要となります。

甲・乙の署名押印が必要となる契約書については、双方の署名押印が完成した時点において契約書が作成されたものとして判断されます。例えば日本本社が日本で2部署名押印した後に上海へ郵送し、上海現地法人が署名押印する場合には日本本社・上海現地法人双方の契約書について日本の印紙税は課税されません。逆の場合、すなわち先に上海現地法人が署名押印する場合には日本の印紙税課税対象となります。

この場合、いつ、どこで作成されたものであるかを明らかにしておかなければ、印紙税の納付されていない契約書について後日いろいろトラブルが発生することが予想されますので、契約書上に作成場所(最後の署名押印場所)を付記しておく等の措置が必要です。

参考:外国で作成される契約書|国税庁 (nta.go.jp)

2. 中国印紙税法(中国印花税法)の課税対象となるか否か

(1) 課税対象の判定

中国国内で使用される課税文書を中国国外で作成発行する場合には、中国印紙税を納付しなければならないこととされていますが、役務提供地により判定がことなります。

  • 契約当事者の一方及び役務提供地がいずれも中国国内の場合
    役務提供者又は役務受領者が中国国内に所在し、中国国内で役務提供がされる場合、中国印紙税の納付が必要となります。
  • 役務提供者及び役務提供地がいずれも中国国外の場合
    中国国内の役務受領者に対し中国国外の役務提供者が中国国外で役務提供する場合、中国印紙税は課税対象外となります。

(2) 納税義務者

中国印紙税では契約両当事者に納税義務があるとされています。そのため、日本企業と中国企業が契約書を締結し役務提供地が中国国内である場合、日本企業は中国国内に納税代理人を有しない場合には自ら申告納税を行う必要があり、納税代理人が申告代行する場合には電子申告が出来ないため窓口手続きが必要で、いずれも留意が必要です。

中国国外納税義務者の申告納税地は、中国国内のサービス提供者または受領者の所在地(居住地)、または中国国内の課税文書作成者の所在地(居住地)を選択することができます。なお、資産譲渡場合は引き渡し場所、不動産譲渡の場合は不動産所在地で申告納税を行います。

実際の具体的判断・取り扱いは各当局判断による部分があるため、事前に当局窓口照会を行うことをお勧めします。

参考:中华人民共和国印花税法 (chinatax.gov.cn)
关于印花税若干事项政策执行口径的公告_税务_中国政府网 (www.gov.cn)
国家税务总局关于实施《中华人民共和国印花税法》等有关事项的公告 (chinatax.gov.cn)
「印紙税の若干の事項にかかる政策執行標準に関する財政部及び税務総局の公告」の第2条

3. (参考)中国印紙税法の改正

中国印紙税法(中国印花税)は、下記の通り2021年6月全国人民代表大会常務委員会議で改正採択され、2022年7月1日より施行されました。

(1) 中国印紙税法概要

中華人民共和国の境内において課税文書を作成し、又は証券取引をする単位及び個人は、これを印紙税の納税者とし、この法律の規定により印紙税を納付しなければならない。中華人民共和国の境外において、境内で使用される課税文書を作成する単位及び個人は、この法律の規定により印紙税を納付しなければならない。

(2) 課税文書の定義

この法律において「課税文書」とは、この法律に附属する「印紙税税目税率表」に列記する契約、財産権移転証書及び営業帳簿をいう。この法律において「証券取引」とは、法により設立された証券取引所又は国務院が承認したその他の全国性証券取引場所において取引される株券及び株券を基礎とする預託証券の譲渡をいう。証券取引印紙税は、証券取引の譲渡人から徴収し、譲受人から徴収しない。

(3) 改正後の税率

税目 税率
契約
(書面による契約をいう)
借入契約 借入金額の0.005%
ファイナンスリース契約 リース料の0.005%
売買契約 代金の0.03%
請負契約 報酬の0.03%
建設工事契約 代金の0.03%
運送契約 運送費用の0.03%
技術契約 代金、報酬または使用料の0.03%
賃貸借契約 賃料の0.01%
寄託契約 寄託料の0.01%
倉庫保管契約 倉庫保管料の0.01%
損害保険契約 保険料の0.1%
財産権移転証書 土地使用権払下証書 代金の0.05%
土地使用権並びに建物当の構築物及び構築物の所有権の譲渡証書(土地経営請負権及び土地経営権の移転を含まない) 代金の0.05
出資持分譲渡証書(証券取引印紙税を納付するべきものを含まない) 代金の0.05%
商標専用権、著作権、特許権またはノウハウ使用権の譲渡証書 代金の0.03%
営業帳簿 払込資本(株式資本)及び資本剰余金の合計金額の0.025%
証券取引 成約金額の0.1%

参考:中华人民共和国印花税法 (chinatax.gov.cn)

大井 高志

税理士法人山田&パートナーズ
海外事業部 パートナー 公認不正検査士
亜瑪達商務諮詢(上海)有限公司 総経理

中国・香港・台湾における組織再編、進出・撤退支援、M&A関連業務、コーポレートガバナンス、不正調査対応等のコンサルティング業務に従事。

  • 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
  • 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
  • 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承ください。
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