海外デスクレポート
2024年6月6日
新会社法に係る減資及び持分譲渡 (中国)
2024年7月1日から施行される新会社法において、有限責任会社の登記資本金は会社設立日から5年以内に払い込まなければならないと規定されています。また、本法施行前にすでに設立された会社では、出資期限が本法に規定された期限を超過した場合に、法律・行政法規・国務院の例外的規定がある場合を除き、新会社法が施行された後の3年以内に、払い込み期限を5年以内に調整しなければならないという経過措置※1も設けられています。
改定前の会社法上において払込期間は制限されておらず、経営期限内に払い込みをすれば良いという取り扱いでした。そのため、対外的な側面や、増資の事務負担を考慮し、多くの会社が資本金の金額を多めに登記している実務がありました。今回の会社法の改正により、このような対応をしていた企業は期限内に資本金を払い込むことが出来ない場合も多いと考えられます。ここでは、一般的に考えられる対応策―減資、持分譲渡の注意点を説明します。
■ 登記上のみの減資 (無償減資)
1. 登記資本金のうち、まだ払い込まれていない資本金を減少することです(対価の支払を伴わず、会社の純資産に影響しない)。形式上の減資のため、税金上の負担はありません。
2. 市場監督管理総局が発表した意見徴収稿※1第五条では、下記のような規定があります。
第五条 新会社法の施行前に設立した会社が経過期間内に、払込資本を減少せず登記資本の減少を申請する場合は、以下の条件を満たした後に国家企業信用情報公示システムにて20日間公示し、公示期間内に債権者より異議申立がない場合は、申請書及び承諾書を持って登記資本を変更することができる。
(一) 未完結の債務がない又は債務額が明らかに払込資本より少ない場合等;
(二) 全株主が減資前の債務に対し減資前の登記資本の範囲内にて連帯責任を負うことに承諾する;
(三) 全董事が会社の債務履行能力及び継続経営能力に害しないことに承諾する。
上記規定を満たさない場合は、新会社法第二百二十四条、第二百二十五条等に従い、減資手続きを行うべきである。
■ 実質上の減資 (有償減資)
1. 登記資本だけではなく、払込資本も減資することです。以下のように減資額により課される税金も異なります。(国家税務総局公告2011年34号)
例 : A社200万、B社800万をもって、C社を設立しました。A社が減資を行い、現金300万を取得しました。減資時におけるC社の未分配利益は100万、利益積立金は50万、資本積立金は80万です。
項目 |
性質 |
企業所得税(法人税) |
出資に相当する部分 |
投資の回収(200万) |
税金なし |
C社の累計未分配利益と累計利益積立金の合計で出資比率に相当する部分 |
配当所得 |
中国国内企業 : 免税 |
残りの部分 |
譲渡所得 |
中国国内企業 : 会社全体の収入による |
2. 払込資本が減少されるため、手続き上は上記意見徴収稿の規定が適用できず、会社法第二百二十四条、第二百二十五条等に従うことになります。
第二百二十四条 登記資本を減少する時に、資産負債表及び財産リストを作成しなければならない。
減資の株主総会決議をした日から10日以内に債権者に通知し、30日以内に新聞又は国家企業信用情報公示システムで公告しなければならない。債権者は通知を受けた日から30日以内に、通知を受けていない場合は公告の日から45日以内に、債務の償還又は担保の提供を要求する権利がある。
(第二百二十五条は減資により繰越欠損を補填する場合の規定であるため、ここでは割愛する)
■ 持分譲渡
新会社法における持分譲渡の主要な注意点は下記の2点です。
1. 現行の会社法においては、株主以外の者に持分を譲渡する場合は、他の株主の過半数の同意を得なければなりませんが、新会社法では書面通知のみで足りることになります。
第八十四条 有限責任会社の株主が株主以外の者に持分を譲渡する場合、譲渡の数量、価額、支払方式及び期限等を書面で他の株主に通知しなければならない。他の株主は同等の条件の下で優先購入権を有する。
株主が書面通知を受けた日から30日以内に返事を行わない場合は、優先購入権を放棄したものとみなされる。
2. 資本金の払込義務は譲受人が負うことになりますが、譲受人が期限内に全額払い込んでない場合は、譲渡人が補充責任を負うことになります。
第八十八条 登記済で払込期限がまだ到来していない持分を譲渡する場合、払込義務は譲受人が負うことになる。譲受人が期限内に全額払い込んでいない場合は、譲渡人が補充責任を負うことになる。
会社定款に定めた期限内に払い込んでない又は非貨幣性資産で出資する場合の資産の価値が登記資本より著しく低下する持分を譲渡する時に、譲渡人と譲受人が出資不足の範囲内で連帯責任を負うことになる。譲受人が知らない、かつ知り得ない場合は、譲渡人が責任を負うことになる。
注書 :
※1 経過措置は国家市場監督管理総局が発表した意見徴収稿によるもので、正式な規定とは言えませんが、重要な参考情報であるものと思われます。
※2 上記条文はすべて抜粋後の条文になります。
出典 :
※ 2023年会社法 : 中华人民共和国公司法 (samr.gov.cn)
※ 2018年会社法 : 中华人民共和国公司法_中国人大网 (npc.gov.cn)
※ 意見徴収稿 : 市场监管总局关于公开征求《国务院关于实施〈中华人民共和国公司法〉注册资本登记管理制度的规定(征求意见稿)》意见的公告 (samr.gov.cn)
※ 国家税務総局公告 : 国家税务总局关于企业所得税若干问题的公告 (chinatax.gov.cn)
- 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
- 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
- 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承ください。
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この記事の著者
大井 高志
税理士法人山田&パートナーズ パートナー
亜瑪達商務諮詢(上海)有限公司 総経理
税理士 公認不正検査士2013年山田&パートナーズ入所。大手金融機関への出向後、2016年より上海へ赴任。中国系会計事務所への出向を経て2019年より現職。中国・香港・台湾における組織再編、進出・撤退支援、M&A関連業務、移転価格税制コンサルティング、コーポレートガバナンス、不正調査対応等のコンサルティング業務に従事。
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