今回は中国子会社の外国親会社からの借入(親子ローン)の特徴について説明します。
特徴 ① 外貨管理局での手続きおよび管理について
親子ローンは外債として外貨管理局で管理されるため、外貨管理局での登記が必要になります。外国親会社と中国子会社での外債契約の締結後15日以内に外債の登記申請をしなければなりません。
以前は借入れた外貨の人民元への転換、元本返済や利息支払いはその都度、外貨管理局での許可が必要とされていましたが、現在は銀行への申請のみとなりプロセスが簡易化されています。
注意点 ② 外債限度額について
親子ローンの外債限度額はいずれかの管理方式の選択になります。外債限度額の計算方法や返済後の外債限度額の復活の有無について特徴があり、検討が必要になります。
【投注差方式】
外債限度額は投資総額と登録資本金(注冊資本金)との差額(一般的に投注差と言います)になります。
登録資本金は払込資本金を指し、投資総額は事業達成のために必要な総所要金額を指し、いずれも法人設立時に定款へ記載する事項になります。過小資本による投資を抑制するため、投資総額に占める登録資本金の割合が定められています。
投資総額 |
投資総額に占める登録資本金の最低比率(最低限度額) |
3,000万ドル超 |
1 / 3(1,200万ドル) |
1,000万ドル超~3,000万ドル以下 |
40%(500万ドル) |
300万ドル超~1,000万ドル以下 |
50%(210万ドル) |
300万ドル以下 |
70% |
投注差方式では外貨建て短期(借入期間1年以内)の外債は返済をすることで外債限度額が復活しますが、中長期(借入期間1年超)の外債や人民元建の外債は返済をしても外債限度額が復活しない(=費消する)点に注意が必要になります。そのため外債限度額をすべて費消した場合、外債限度額を拡大するには増資等をする必要があります。
【マクロプルーデンス方式】2016年に導入
外債限度額は純資産額にレバレッジ率とマクロプルーデンス政策因数を乗じた金額になります(中国子会社が中国本土の一般企業の場合)。2024年8月現在、レバレッジ率が2.0、マクロプルーデンス政策因数が1.5となっているため、外債限度額は純資産額の3倍になります。
投注差方式と異なり、プルーデンス方式では通貨や借入期間を問わずいずれも返済をすれば外債限度額が復活します。
出典:
- 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
- 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
- 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承ください。