海外デスクレポート
2017年8月10日
マレーシア/マレーシアとイスラム教

執筆:マレーシア担当
世界人口の4分の1がイスラム教徒と言われる中でハラルビジネスに注目が集まっています。イスラム教国でもあるマレーシアへの進出メリットとして、ハラル認証機関の信頼性の高さやハラル産業への優遇策、インフラの充実度、英語でのコミュニケーションなどが挙げられます。
マレーシア国民の6割を占めるマレー系の人々は基本的にイスラム教徒です。首都のクアラルンプールでも街を歩くとヒジャブと呼ばれるスカーフを被り、髪を隠した女性とすれ違います。お祈りの時間になると、あちらこちらから時間を告げるアナウンスやコーランを読誦する声が聞こえてきます。また毎週金曜日の正午の礼拝は、金曜礼拝と言って一週間で最も重要なお祈りとされています。このため、政府機関や一般企業の中には、金曜日だけ2時間(礼拝のために1時間、昼食に1時間)の昼休憩を設定しているところが多くあります。
イスラム教では豚肉が禁止されていることはよく知られていますが、その他にもカフェイン、タバコ(ニコチンの接種)、アルコール類が禁止されています。アルコール類には酒類だけでなく、みりんなどのアルコール発酵を伴う食品類も含まれるため、残念ながら多くの日本食がハラルに適合しません。普段日本では気付きませんが、お菓子にも豚由来のラードやゼラチンを利用しているものが多くあり、日本から輸入された商品に「Non halal」のシールが貼られているのをよく見かけます。スーパーマーケットなどでも豚肉や豚由来のゼラチンを含む食品は他の商品と売り場が隔離されており、イスラム教徒ではない従業員のいるレジでしか会計できないなどの制約があります。
1. ハラル認証
ハラル(Halal)とはアラビア語で「許可された」という意味を持ちます。イスラム教徒はイスラム法(シャーリア法)において認められた食品類「ハラル」しか口にすることができません。なお、ハラル認証は食品だけに限らず、店舗や建物、食肉処理場に対しても発行されています。また最近ではハラル認証を得た化粧品にも注目が集まっています。
マレーシアでは、ハラル認証を得ていない食品を販売することは可能であり、制約もありません。しかしながら人口の6割がムスリムであることから、この需要を取り込むためにハラル認証を得ている企業も多くあります。ケンタッキー・フライド・チキンやマクドナルド、スターバックスなどのグローバル企業も認証を得ており、これらの店舗や商品広告にハラル認証マークが表示されています。日系の飲食店でも“ハラル・ラーメン”に取り組んでいるところがあるそうです。
(1) 認証手続き
マレーシアにおける認証機関として、マレーシアイスラム開発局(Jabatan Kemajuan Islam Malaysia:JAKIM)があります。JAKIMの特徴はマレーシアの政府機関である点です。世界的に見ても政府機関がハラル認証を行うケースは珍しく、このためJAKIMが他国のハラル認証機関の教育を行うなど、国際的な信用度も高いと言われています。
JAKIMに対するハラル認証手続きは、オンラインでの登録手続きが可能です。登録を行うと、JAKIMによる監査が実施されます。監査項目は、原材料に豚肉やアルコール類などを利用していないだけでなく、調理場や処理加工施設における準備処理、加工、包装、運搬に至る全ての工程が適切であることや、運搬車両がハラル専用であることなど多岐にわたります。また社内にハラル監査委員会を設置しイスラム法学を学んだ専門スタッフを任命するとともに、調理場や処理加工施設の責任者としてマレーシア人イスラム教徒2名の正規雇用が求められています。これらの要件をクリアすると、JAKIMより認可が得られます。なお、認証手数料は企業の規模や処理量によって100~700リンギット(約2,600円~約18,200円。1リンギット≒26円で概算。)とされています。
(2) 企業に対する優遇措置
マレーシア国内には「ハラルパーク」と呼ばれる、ハラル食品生産のための設備が整えられた工業団地が設けられています。コカコーラや日系企業ですとキューピーなどがこのハラルパーク内操業しています。
ハラルパーク内でハラル食品を生産する企業に対しては、
① 10年間の企業が行う適格資本的支出に係る100%の投資控除(特別償却)
または5年間のハラル食品の輸出に係る所得に対して法人税免除。
② ハラル製品の開発や生産のため機械設備、原材料にかかる輸入関税の免除。
などの優遇措置が設けられています。
(3) 他国への輸出
マレーシアは、ハラル食品の輸出に力を入れています。隣国のインドネシアや中東地域はもとより、非イスラム圏に住むムスリム向けの輸出も盛んです。ハラル産業開発公社(HDC)の統計によれば、非イスラム圏の国としては中国や米国、日本などへの輸出が上位となっています。
2. イスラム金融
マレーシアに銀行は、通常の商業銀行とともにイスラム金融専門の銀行をグループ内に保有しているケースが多くあります。
一般的に「イスラム金融」と呼ばれますが、これはイスラム法(シャリア法)に適合した金融制度全般のことを指します。例えば、イスラム金融では金銭を貸し付けた際に利子を付与することを禁止しています。このため、高額の物品を購入する際には、一旦銀行が資産を購入し、購入価格に利益を上乗せしてこれを顧客に割賦販売する方法が取られています。また似た方法としては、銀行等が資産を購入しこれをリースする方法があります。リース料総額を資産の購入代金より多くすることで利益を得る仕組みとなっています。
また実物が存在しないものの取引も禁止されています。このため、住宅を新築・購入する際には、まず購入希望者は設計図面を銀行等金融機関に渡して、設計図に従った住宅を銀行が取得します。そして購入希望者は銀行からこれを割賦購入するという手法も用いられています。
世界人口の4分の1がイスラム教徒と言われており、新たな市場として注目を集めています。日本の金融機関でもイスラム金融の免許取得や、イスラム法学者による専門委員会を設置なども近年ニュースとなっています。
3. イスラム教国としてのマレーシアへの進出
2030年には世界人口の27%がムスリムになると予想され、新たな市場としてハラルビジネスに取り組む企業も増えています。中東諸国などにおいて外資企業がハラル認証を得ることはハードルが高いですが、マレーシアの場合には①英語でのコミュニケーションが可能であること、②国としてハラル食品の輸出に積極的で優遇もあること、③認定機関の信頼度が高いこと、などを理由に多くの外資系企業がマレーシアでのハラルビジネスに取り組んでいます。イスラム圏へのビジネス展開のために、マレーシアに進出するというのも新たな選択肢と考えられます。
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