執筆:フィリピン担当
今回は、内国歳入庁(BIR) から出された租税条約の適用申請の簡素化に関する税務通達(Revenue Memorandum Order 第8-2017)について解説させて頂きます。 この税務通達は2017年3月にBIRから出され、 2017年6月26日より適用開始になっております。対象は 配当、利子、 ロイヤリティとなっており、従前は軽減率の適用を受けるため煩雑であった手続きが簡便化されることになります。
■ 申請手続きの弊害
フィリピンではこれまで租税条約の適用申請手続きに多々問題がありました。従前の税務通達により申請を行った場合、たとえ申請期限までに申請を行った場合であっても承認を受けるのに数年かかることが多く、原則取引毎の申請が必要とされているため配当の場合であれば配当毎の申請が必要となっており申請手続きが頻繁に必要でした。また、申請手続き書類には、相手国における居住者証明や英語翻訳された会社定款などの書類が要求され、これらの書類については当該相手国のフィリピン大使館での認証が必要であり入手のため多くの時間を費やすことが多々ありました。
■ 税務通達の目的
(1) 申請書類の簡素化
今回の通達により、従前の申請書にから新たにCertificate of Residence for Tax Treaty Relief (CORTT)フォームが導入されました。CORTTフォームはPartⅠとPartⅡから構成されており、PartⅠにはフィリピンから所得を得る相手国の非居住者情報や相手国の税務当局に記載依頼を行う箇所があります。 PartⅡでは配当、利子又はロイヤリティの支払を行うフィリピン企業の情報を記載することになっており著しく簡便化されております。
(2) 源泉税にかかる申告書Form 1601-F及びForm 1604- CFによる情報開示
非居住者にかかる配当、利子及びロイヤリティが、源泉税申告書Form 1601-F及びForm 1604-CFによってCORTTフォームと同等の情報が開示され、 配当、利子又はロイヤリティの支払者から適時に申告されることを目的の一つとして当該税務通達に盛り込まれています。
(3) 租税条約適用のコンプライアンス促進
CORTTフォームとForm 1601-F及びForm 1604- CFとの間に内容の不一致がある場合や、CORTTフォーム、Form 1601-F又はForm 1604- CFに事実と異なる事項の記載がある場合には、コンプライアンス違反と見なされペナルティーが発生します。
■ 実務上の取り扱い
- 例えばフィリピン子会社と日本の親会社間で利息の支払いを行う場合、対象となる利息を受け取る日本の親会社は、 当該利息が支払われる時点又は未払費用の計上を行う、いずれか早い時点の前にCORTTフォームに必要事項を記載してフィリピン子会社(源泉徴収義務者) に提出しなければなりません。
- 利息の支払を行うフィリピン子会社(源泉徴収義務者)は、親会社より取得したCORTTフォームを、 最終源泉税支払後30日以内にInternational Tax Affairs Division(BIR国際部門)とRevenue District Office No 39(Quezon市にある税務局) に提出する必要があります。
- 留意点としては、利子とロイヤリティに関しては原則CORTTフォームは契約書ごとに必要になります。
■ まとめ
今回の税務通達では、 租税条約申請のための書類作成・準備負担が大幅に軽減されたため日系企業を含む外国企業にとってはメリットがあるものと言えるでしょう。
ただし、適用後においてコンプライアンス違反が発覚した場合、 軽減税率の適用が否認、 所得支払を行うフィリピン企業側ではその支払経費の損金否認等が発生することになりますので取り扱いには十分な留意が必要です。
- 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
- 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
- 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承ください。