海外デスクレポート

2018年9月19日

アメリカ/海外留保所得に対する一括課税制度(965条 移行税)

アメリカ/海外留保所得に対する一括課税制度(965条 移行税)

執筆:アメリカ担当

1. 制度の概要

2017年末に行われた米国税制改革により、米国法人が一定の持分を有する米国外の法人(日本法人も含まれます。以下、「外国法人」)から受ける配当については、今後は全額非課税となる制度が創設されました。その代わり、過去の未配当の留保所得については配当したものとみなして一括で課税する制度も一緒に創設されました。(965条 移行税)
965条 移行税は今回限りの制度ですが、最大で約30年分(1987年以降)の留保所得に対して一括課税される制度であるため、当該制度の対象者には重い税負担が課される可能性があります。

(1)対象者

2017年12月31日以前に開始する外国法人の最終事業年度おいて米国株主である者のうち、次の要件に該当する者
法人株主:外国法人の持分を10%以上保有する米国法人
個人株主:下記フローチャートに該当する税務上の米国居住者等

(2)課税対象となる留保所得額

上記(1)の対象者が要件に該当することとなった日又は1987年のいずれか遅いとき以降の外国法人の留保所得(米国税法上のE&P)が対象となります。そして、2017年11月2日又は2017年12月31日時点の留保所得のいずれか高い額が課税対象額となります。

(3)間接外国税額控除

外国法人の支払った外国法人税のうち、上記(2)により課税対象とされた金額に対応する部分は間接外国税額控除として課税対象留保所得額から控除することができます。但し、この制度は法人株主にのみ認められています。

(4)税率

法人株主か個人株主、現預金相当額(※)かそれ以外かで課される税率が異なります。

※現預金相当額には、現預金・債権・有価証券等が含まれます。

(5)申告時期

外国法人の2017年12月31日以前に開始する最終事業年度の期末の属する課税期間に株主に配当したものとみなされ、米国株主に対して課税されることになります。
(米国の申告期限は、期末から3ヶ月半)

例)

外国法人が12月決算、米国株主も12月決算(暦年)の場合
→ 2017年度に配当したものとみされますので、申告期限は2018年4月17日です。

外国法人が12月決算以外、米国株主は12月決算(暦年)の場合
→ 2018年度に配当したものとみなされますので、申告期限は2019年4月15日です。

 

2.留意点

(1)分割納税

一括での納税だけではなく、8年間の分割納税を選択することも可能です。
分割割合:1~5年目8%、6年目15%、7年目20%、8年目25%の納税が必要(遅延利息なし)

当初は1回目の申告期限までに1回目分(8%相当額)の納税を行わなければ分割納税はできないとされていました。ですが、もし1回目の納税がもれていた場合でも、移行税の額が100万米ドル以下で、かつ、2回目の申告期限までに1回目と2回目分(計16%相当額)を納税すれば、分割納税の適用が可能となったことがIRSより追加で発表されています。
但し1回目分が未納ではあるため、その分に対する遅延利息は生じます。

例えば、外国法人が12月決算、米国株主も12月決算(暦年)の場合は1回目の申告期限が2018年4月17日、2回目の申告期限が2019年4月15日となります。納税の有無、分割納税の適用の要否は早めに確認しておく必要があります。z

(2)個人株主の場合

上記1(3)に記載されている間接外国税額控除は、原則個人株主には適用できないため、個人株主の場合は法人株主より税負担が重くなってしまいます。ですが、一定の特例制度を選択適用することにより個人株主においても間接外国税額控除を使うことができるようになり、税負担を抑えられる可能性があります。制度の選択についても確認・検討しておく必要があると考えられます。

 


  • 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
  • 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
  • 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承ください。
  • 岩﨑 理恵

    この記事の著者

    岩﨑 理恵
    税理士法人山田&パートナーズ

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