執筆:シンガポール担当
シンガポールは東南アジアの海上交通の要衝に位置することから歴史的に国際中継貿易港として栄えてきました。 1970年代に石油化学・電子工業を中心に高度経済成長を達成し、現在は充実したインフラ、法制度・行政手続の透明性、税務上のメリットなどの優位性を活かし 東南アジアの重要なビジネス拠点としての地位を得ており、多くの外国企業が進出しています。
基礎情報
基礎情報
シンガポールは東京23区とほぼ同じ面積の国土を持つ人口約5百万人の都市国家であり、1人当たりGDPは約5万ドルであり日本を抜いてアジア1位となっています。
進出動向
東南アジアの先進国としてビジネスインフラが整っているシンガポールには、多国籍企業の東南アジア地域を統括する地域統括会社が集積しています。
また勃興する東南アジアの消費市場をにらみ、そのゲートウェイとしてシンガポールに進出する中小企業が増えています。
外資規制・投資促進
軍事事業や公益事業など一部の業種以外は外資規制はありません。基本的には外資100%にて会社が設立可能です。また資本金規制がないため1ドルからの会社設立が可能です。またシンガポールは国家戦略として知識集約型経済を目指し、研究開発部門や先端技術を持つ高付加価値産業などへの投資を奨励しさまざまな投資優遇措置を提供しています。
・外資規制
海外ビジネス展開を検討するにあたり外資の参入規制は重要な検討項目になります。シンガポールは資源が乏しい小国であり歴史的に外国の資本と労働力を受け入れて発展してきました。現在も外国資本に対して広く門戸を開き投資を奨励しています。そのため、軍事事業や公益事業など一部の業種以外は外資規制はありません。基本的には外資100%にて会社が設立可能です。また、資本金規制がないため1ドルからの会社設立が可能です。なお金融業、不動産業、一部の小売業など営業許可が必要な業務もあるので事前の確認が必要になります。
営業許可が必要となる業種については政府のホームページで確認することができます。
Online Business Licensing Service (OBLS)
https://licences.business.gov.sg/
・投資促進
投資国を選定するにあたってその国が奨励している産業と投資優遇プログラムの有無の確認は重要な検討項目になります。シンガポールは国家戦略として知識集約型経済を目指し、研究開発部門や先端技術を持つ高付加価値産業などへの投資を奨励しています。シンガポール経済開発庁(Economic Development Board, EDB http://www.edb.gov.sg)は外資誘致を使命とする政府機関であり、奨励産業として以下の分野を掲げています。
■主な奨励産業
エレクトロニクス、化学、医薬品・バイオテクノロジー、医療技術、バイオメディカル、精密エンジニアリング、航空エンジニアリング、造船・海洋エンジニアリング、エンジニアリング・サービス、ヘルスケア、物流・サプライチェーン管理、情報通信サービス、情報通信製品、国際非営利団体、メディア・エンタテーメント、エネルギー、代替エネルギー、環境・水資源、コンシューマ・ビジネス、専門家サービス、成長ビジネス
技術力のある外資を呼び込み経済発展を続けるシンガポールは、法人税率を17%に抑えるなど税制面で国際競争力を高めてきました。シンガポール経済開発庁 (EDB)は外国企業に投資優遇措置を提供する窓口となっています。優遇措置を受けられる投資の認可の条件として、相当規模の資本投資であることや、高度技術と製造技術に関連したプロジェクトであること、特殊技術や専門的サービスの提供を行うこと等が求められており、これを通じて高付加価値産業への投資促進を誘導しています。様々な優遇措置が用意されていますが、税制面での代表的な投資優遇措置は以下のとおりです。
【パイオニア・インセンティブ 】
シンガポールの経済発展に大きく寄与すると認定された企業には、最長 15 年間にわたり法人所得税の免税措置が受けられます。政府の裁量により付与されるものであり決まった基準はありません。
【地域統括本部】
アジア太平洋地域の統括拠点をシンガポールに置く企業で政府の認定を受けた企業は、地域統括サービスと認定される所得(経営、サービス、販売、貿易、ロイヤルテイ)の増加分に対して15%の優遇税率が適用されます(当初3年、2年延長可)。3つ以上の地域統括サービスを3カ国以上の海外のグループ企業に提供することが前提であり、適用開始から3年以内に年間事業支出を200万シンガポールドル以上増加させることなどの基準を満たす必要がある。
【グローバル・トレーダー・プログラム】
石油製品、石油化学製品、農産物、金属、電子部品、建築資材、消費財などの国際貿易に携わる会社でシンガポールをオフショア貿易活動の拠点として位置付け、経営管理、投資・市場開拓、財務管理、物流管理の機能を有する会社が対象であり、認定されると特定商品のオフショア貿易による収益に対して5%または10%の軽減法人税率が適用されます。