海外デスクレポート

2024年9月26日

有形固定資産の処分についての税務上の取り扱い (カンボジア)

有形固定資産の処分についての税務上の取り扱い (カンボジア)

カンボジアの税務調査において指摘されやすい有形固定資産の処分について、税務上の取り扱いを解説致します。

 

2020年622日付の通達第15301号に続き、税務総局(General Department of Taxation:以下GDT)は、補足通達(202267日付の通達第12093号)を発布しており、有形固定資産を処分される際には、以下の点について注意が必要です。

 

① 納税者が購入時にVATの仕入税額控除を受けたかどうかに関わらず、納税者の事業の用に供さなくなったものを再利用目的、またはスクラップとして売却する場合は、現行のカンボジア税法および規則に従い、10%VATが課税されます。

② 固定資産の処分(破棄、損傷、売却価値なし)については、処分に関する明確な証拠がある場合に限り10%VATを課税しないものとします。企業は、会計上の帳簿価額(NBV)20万リエル(50米ドル)以上の固定資産を破棄する場合は、少なくとも10営業日前までにGDTに通知することが義務付けられています。GDTは通知を受領してから10営業日以内に、税務担当官を破棄現場に派遣します。税務担当官が破棄現場にて固定資産の処分の事実を確認し承認した場合に限り、VATの免税が認められる形となります。

③ 納税者がすでにVATの仕入れ税額控除を適用し、事業の用に供する有形固定資産について、税法第16条に規定する慈善寄付(Charitable contribution)を行う場合、以下に限り、資産の売却とは見做されず、10%のVATおよび法人税の課税対象とはなりません。

  • 税法上、クラス2に分類される有形固定資産で、3年以上事業のために使用されており、会計上の帳簿価額(NBV)は1,000,000リエル(約250米ドル)を超えないこと
  • 税法上、クラス3および4に分類される有形固定資産で、5年以上事業のために使用されており、会計上の帳簿価額(NBV)は2,000,000リエル(約500米ドル)を超えないこと

<参考>
固定資産の減価償却費については、税法で定められた償却率・償却方法により損金算入が可能となりますが、償却可能資産は、以下4つの区分に分類されます。

クラス1・・建物および構築物(5%定額法)
クラス2・・コンピュータ、電子情報システム、ソフトウェア、およびデータ処理装置(50%定率法)
クラス3・・自動車、トラック、事務所備品及び装置(25%定率法)
クラス4・・その他のすべての有形資産(20%定率法)

④ 税法上、クラス1(建物および構築物)に分類される有形固定資産(新規建設、購入どちらも)で、VATの仕入れ税額控除を適用しているが、事業で使用していないものは、売却として扱われないため、10%VATの課税対象とはなりません。

一方で当該クラス1に分類された有形固定資産を事業の用に供した後、1年以上使用しなくなったものについては、企業(納税者)が、資産の使用を停止するに至った正当な理由をGDTに通知することを条件に免税の適用が認められます。

⑤「使用されていない有形固定資産」とは、1年以上、保有しているが、事業で使用されていない有形資産を指します。

 

本通達は、2020622日付の通達第15301号を補足する内容となっています。

通達第15301号の概要は以下のとおりとなります。

<通達第15301号の概要>
事業で使用する有形固定資産を廃棄、定価よりも安く寄付、または供給、もしくは事業譲渡以外の理由で他の企業に無償譲渡する場合、市場価値にて売却したものとして10%VATが課税されます。

VATの仕入れ税額控除の適用を受け、かつ登録事業者の事業の用に供さなくなった有形固定資産については、売却したものと見做し、使用を終了した時点における市場価値に対してVATが課税されます。一方、事業で使用を終了した時点で、VATの仕入れ税額控除の適用を受けていない有形固定資産は、売却扱いとはならず10%VATの対象とはなりません。但し、資産が実際に売却される場合を除きます。つまり、購入時にVATの仕入れ税額控除の適用を受けていない場合、固定資産を売却したタイミングで10%VATが課税される形となります。

 

本通達第12093号によって具体的な免税の適用について手順が明確化された形となりますので、有形固定資産を処分する際には、十分に注意して税務申告を行う必要がある点に留意が必要です。

 


  • 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
  • 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
  • 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承ください。

 

【 この記事の著者 】

坂本 佳代

税理士法人山田&パートナーズ 海外事業部 
・カンボジア税法ディプロマ資格者
・カンボジア公認会計士・監査士協会(The Kampuchea Institute of Certified Public Accountants and Auditors)アフィリエイトメンバー登録者

2014年に日系コンサルティングファームに入所、2016年よりインド・バンガロールに駐在。2019年よりカンボジア・プノンペンに駐在。インド、カンボジアに会計事務所責任者として常駐していた約8年、現地日系進出企業の様々な悩みにワンストップで対応。(会計税務全般、進出及び撤退コンサルティング、登記及びライセンス登録業務、労務、国内取引及びクロスボーダー取引にかかる税務アドバイザリー、現地税務当局との折衝、抗弁書作成等の税務調査対応の経験多数)2024年に税理士法人山田&パートナーズに入社。

海外デスクレポートに戻る
すべて見る

CONTACT US

弊社へのご質問、ご依頼、ご相談など
各種お問い合わせはこちらにご連絡ください。

お問い合わせはこちら