1. アメリカ投資の税務について
日本に住んでいる日本人がアメリカの投資資産を購入する場合には、日本と米国それぞれの制度に注意する必要があります。購入時、資産保有時、相続発生時の段階に分けて、主な注意点を解説します。
2. 米国不動産
・購入時
名義を単独名義にするか共同名義にするかがポイントになります。アメリカでは相続発生時のプロベートを回避するために共同名義にすることが多いですが、それぞれの資金の拠出割合によっては日本での贈与税を検討する必要があり注意が必要です。
・資産保有時
日本居住者はアメリカ不動産所得も日本所得税の課税対象ですので、日本所得税の計算にアメリカ不動産所得を含める必要があります。
まず、アメリカ所得税では、「源泉徴収で課税を終了させる方式」と「収入から費用を控除した所得(利益)を基準に税金を計算する方法」を選択することができます。前者は計算が簡素な反面、後者の方が税額が少なくなるケースが多いため、いずれかを選択をする慎重な検討が必要です。次に日本では、アメリカ不動産所得を含める際に減価償却費の耐用年数に関する税制改正を考慮し、何年で費用計上するかを日本税法に沿って検討して別途計算することが必要です。なお、アメリカ不動産所得を合算する際に、アメリカ所得税は日本所得税で外国税額控除制度を利用することができ二重課税を回避することができます。
・相続発生時
被相続人と相続人の居住地により結果は異なりますが、例えばアメリカ不動産所有者が日本居住者の状態でお亡くなりになり相続人も日本居住者の場合、日本の相続税、アメリカの遺産税それぞれの課税対象となります。アメリカ遺産税の申告期限は9ヶ月(別途延長手続きあり)となっており、アメリカで納税が生じた場合には日本の相続税からアメリカ納税分を控除して二重課税を適正に排除する必要があります。
なお、アメリカでは連邦税たる遺産税以外に、地方税としても独自に遺産税もしくは相続税を設けている州がありますので、注意が必要です。
3. 米国預金
・購入時
米国不動産と同様に名義を単独名義にするか共同名義にするかがポイントになります。アメリカでは相続発生時のプロベートを回避するために共同名義にすることが多いですが、資金の拠出者が1人である場合には日本の贈与税を検討する必要があり注意が必要です。
・資産保有時
利子収入に対しては事前に租税条約の届け出書(W-8Ben)を提出することでアメリカでの税金の免除を求めることが可能です。一方で日本は利子収入を申告する必要がありますので注意が必要です。
・相続発生時
日本の相続税の対象となりますが、アメリカの遺産税では非事業用の預金口座はアメリカの財産として計上する必要はないこととされています。事業用の預金口座である場合には日本の相続税とアメリカの遺産税双方の対応が必要となります。また不動産の所在州によっては別途州の相続税(遺産税)が定められている可能性がありますので併せて注意が必要です。
4. 米国株式
・購入時
アメリカの金融機関にて株式を保有する場合には、やはり単独名義とするか共同名義とするか事前に検討する必要があります。
・資産保有時
配当収入や株式売却収入に対しては事前に租税条約の届け出書(W-8Ben)を提出することでアメリカでの税金の免除(もしくは引き下げ)を求めることが可能です。一方で日本の金融機関経由で保有する場合は特定口座において金融機関がアメリカの手続きを適正に行うため、特別に注意する点はありません。
・相続発生時
日本の相続税、アメリカの遺産税それぞれの課税対象となります。アメリカ遺産税の申告期限は9ヶ月(別途延長手続きあり)となっており、アメリカで納税が生じた場合には日本の相続税からアメリカ納税分を控除して二重課税を適正に排除する必要があります。
- 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
- 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
- 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承ください。