海外デスクレポート
2023年11月9日
コラム:日米相続で日本相続税の納税資金が足りない!? (米国)

〈 登場人物 〉
- 被相続人:父A(日本人、日本居住者)
- 相続人:長男B(日本人、日本居住者)、長女C(日本人、米国居住)
- 遺産:日本不動産(AとBが居住)、日本の金融資産、米国不動産(Cが居住)
- 米国不動産の名義はA個人となっており、プロベートの対策無し。
- Bから相談を受けた弊社担当:Y
〈 事例の流れと顛末 〉
B:私の父のAが亡くなりまして、相続について相談したいですが、日本と米国に財産があり、相談可能でしょうか?バタバタしていて、もうすでに亡くなって7ヶ月が経ってしまっていまして、申告期限のことも気になっています。
Y:大丈夫です。頑張ってみましょう。
財産はおおよそ特定できていますか?金額はおおよそ把握されていますか?
B:財産も複雑ではなく、日本の不動産は古いマンションで時価はもっと低いと思うので、私としても、日本財産を私、米国財産をCと分けたいと思っていますが、Cが平等に日本預金を半分もらいたいと言っているのでまだ分割案がまとまっていません。日本と米国の不動産の購入価額は判明しまして、ここに記載の金額です。
相続財産一覧 |
|
日本不動産 |
5,000万円(購入価額) |
日本預金 |
1,000万円 |
米国不動産 |
5,000万円(購入価額) |
Y:日本の納税期限が心配ですので、まずは日本の相続税を計算しましょう。
念のため不動産鑑定評価を取得してもよろしいでしょうか?
B:そうですね。お願いします。
~後日~
Y:日本の不動産は相続税評価額を用いることができ評価が小さくなりましたが、米国不動産は不動産鑑定評価額によるとインフレと為替の影響があり大幅に高騰しています。税務申告用の財産額とはいえ先日いただいた財産一覧とはイメージがだいぶ違うと思います。結果的に、Aさんが日本でお持ちだった預金ではBさんとCさんの日本の相続税が払えないようです。納税資金を確保できそうでしょうか?念のため先日お聞きしたBさんとCさんの案で税額を試算しましたので確認ください。
・Bさんの分割案
財産の種類 |
B相続財産 |
C相続財産 |
日本不動産 |
1,000万円(相続税評価額) |
|
日本預金 |
1,000万円 |
|
米国不動産 |
|
1.3億円(鑑定評価額) |
合計相続財産額 |
1.5億円 |
|
合計日本相続税額 |
1,840万円 |
|
相続人別日本相続税額 |
245万円 |
1,595万円 |
・Cさんの分割案
財産の種類 |
B相続財産 |
C相続財産 |
日本不動産 |
1,000万円(相続税評価額) |
|
日本預金 |
500万円 |
500万円 |
米国不動産 |
|
1.3億円(鑑定評価額) |
合計相続財産額 |
1.5億円 |
|
合計日本相続税額 |
1,840万円 |
|
相続人別日本相続税額 |
184万円 |
1,656万円 |
B:えっ!? 私だけでなくCも日本で納税が必要ですか?
Y:お亡くなりになった方が日本居住者の場合では、日本所在の財産だけでなく、米国にある財産まで日本の相続税の課税対象になってしまいます。
B:おそらくCは日本に預金を持っていませんし、米国不動産の価格からしても、日本の預金をCに渡すのは納得がいきませんし・・・。Cに確認してみます。
~後日~
B:自宅を処分すると転居も必要ですし、手続きにも時間がかかってしまうようで、Cの日本相続税の支払い方法は保留になりました。ただ、先日いただいた資料をCに見せて説明したところ、日本で納税が必要なことと税額が高額化する原因が米国不動産価額の時価高騰であることを理解してくれ、、私の案で納得してくれました。米国不動産の時価を踏まえるとアンバランスですが・・・。でも、この計算によると私の納税額も米国不動産の時価高騰の影響を受けていますよね?
Y:そうです。日本の相続税の計算方式は、分割前の財産総額を税額計算の途中で使いますので、累進税率の関係で、米国不動産を相続しないBさんが払う税金に米国不動産の価値が影響してしまっています。
~後日~
B:Cから連絡があり、将来の子供の進学資金に貯めていた預金を取り崩して払うそうです。Cは日本の銀行預金が一部もらえるとあてにしていたようだったので、もらえないどころか預金を取り崩すことになり、かなりショックを受けていました。最終的には自宅は売却することになるようです。残念ながら私との関係もぎくしゃくし始めてしまいました。
Y:Cさんにとっては酷な結果になってしまいましたね。送金の際に銀行に資料を求められるかもしれませんので、至急、申告書と納付書の準備をしますね。
(補足)
このような事例は日米間で生活をされた経験のあるご家族であれば、誰しもが陥る可能性があります。日本の物価は安定しているものの、米国の不動産価額は近年右肩上がりに上昇しています。また、米国にも固定資産税がありますが、州によっても異なるうえに、米国固定資産税評価額は時価を必ずしも反映したものではありませんので注意が必要です。なお、本コラムでは内容を簡素化するために、米国の遺産税や相続手続き(プロベート)について触れていませんが、実際には米国遺産税やプロベートの課題も発生します。
海外財産や海外居住者を有する家族は国際相続対策として日本と外国それぞれの専門家に事前に相談し、エステートプランを検討することが重要です。
本件でも、もしもご生前にAさんの財産のポートフォリオを分析し、両国の納税資金や課題を事前に把握できていれば、BさんとCさんの関係性も悪くなることはなかったかもしれません。その意味でも、エステートプランは家族の絆を保つためにも必要といえます。
- 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
- 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
- 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承ください。
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この記事の著者
遠藤 元基
Yamada & Partners USA, Inc.
パートナー 日本税理士・公認不正検査士2007年税理士法人山田&パートナーズ東京本部入所、2011年福岡事務所開設・同所長就任。2019年よりベトナム及びタイに駐在。2023年より米国駐在。エステートプランニング、クロスボーダーM&A、グローバル組織再編、海外子会社不正調査など幅広い業務に対応。
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