海外デスクレポート

2024年5月28日

米国進出の基本 (米国)

米国進出の基本 (米国)

現地法人を設置し米国進出を検討する場合には、税務や法務において、日本と異なる留意点があります。基礎的な検討事項を整理すると下記のとおりです。

 

(1) 設立の法務
米国では一般に法人設立は弁護士に依頼します。また、日本では法人格は会社法として国の制度で画一的に定められていますが、米国では、州法となります。また、弁護士も州の資格のため、設置したい州の対応が可能かの確認も必要です。

 

(2) 登録代理人
州によっては、設立にあたって、法人設立をする州に所在する登録代理人が必要とされる場合があります。他にも、ペーパーカンパニーを設置し、国外からリモートで運営する法人を設置する場合などでは、継続して登録代理人が必要になる場合があります。

 

(3) 法人税
米国では、連邦税、州税、地域によっては市税があります。連邦税の税率は21%で、州税は独自で制定されており下記の通り税率が大きく異なり、制度も異なります。なお、税率が低い州に米国法人を設置する場合には日本のタックスヘイブン対策税制の対象になってしまう場合がありますのでご留意ください。

※参考:州所得税の最高税率(概要)

9%台 ミネソタ州、アラスカ州、ニュージャージー州
8%台 カリフォルニア州、デラウェア州、バーモント州、ペンシルベニア州、メリーランド州、ワシントンDC、マサチューセッツ州
7%台 オレゴン州、コネチカット州、ルイジアナ州、ニューハンプシャー州、ニューヨーク州、アイオワ州、ロードアイランド州
6%台 モンタナ州、アラバマ州、カンザス州、テネシー州、ウェストバージニア州、ハワイ州、ミシガン州、バージニア州
5%台 ニューメキシコ州、ネブラスカ州、アイダホ州、ジョージア州、フロリダ州、ケンタッキー州、ミシシッピ州、サウスカロライナ州
4%台 アリゾナ州、インディアナ州、アーカンソー州、ユタ州、コロラド州、ノースダコタ州、ミズーリ州、オクラホマ州
2%台 ノースカロライナ州
なし テキサス州、ネバダ州、ワシントン州、ワイオミング州、サウスダコダ州、オハイオ州

 


(4) BOIR
2024年から開始となった新たな情報開示制度で、法人で事業をされる場合に、開示対象に該当する個人のパスポートの登録を求めるものです。米国法人の代表者、米国法人の主要な個人株主(直接又は間接)などが開示対象となっています。また、日本法人の支店方式で進出する場合には日本法人の代表者なども開示対象となります。なお、開示内容に変更がある都度、報告が必要です。

 

(5) 年次報告
州によっては、年次報告を求められる場合があります。年次報告は州により提出時期が異なりますので注意が必要です。

 

(6) 駐在員の派遣
外国人駐在員数は自由に設定できません。新規設立で投資額が少額の場合、配置できない場合もあります。また、現地雇用が侵害されないように外国人駐在員が必要である理由や配置図なども求められ、米国籍者やグリーンカード保有者の雇用数も検討材料になります。

 

(7) 日米社会保障協定
日本法人所属者が、グループの米国法人に駐在する際に現地社会保険の加入義務が免除になります。ただし、これは5年が上限ですので留意が必要です。

 

(8) オーナー一族の現地配置の留意点
米国外法人を有する米国居住者は米国個人所得税申告の際に、米国外法人の内容を開示する必要があります。そのため、日本法人のオーナーが直接現地駐在を行う場合、日本法人の情報開示が必要になる場合があり、複数のグループ企業を有する場合は開示対象が多くなるなど注意が必要です。

 

 


  • 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
  • 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
  • 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承ください。
  • 遠藤 元基

    この記事の著者

    遠藤 元基
    Yamada & Partners USA, Inc.
    パートナー 日本税理士・公認不正検査士

    2007年税理士法人山田&パートナーズ東京本部入所、2011年福岡事務所開設・同所長就任。2019年よりベトナム及びタイに駐在。2023年より米国駐在。エステートプランニング、クロスボーダーM&A、グローバル組織再編、海外子会社不正調査など幅広い業務に対応。

海外デスクレポートに戻る
すべて見る

CONTACT US

弊社へのご質問、ご依頼、ご相談など
各種お問い合わせはこちらにご連絡ください。

お問い合わせはこちら