海外デスクレポート

2014年1月30日

ベトナム進出に際しての懸念事項

ベトナム進出に際しての懸念事項

執筆:ベトナム担当

1.人件費の上昇

人件費の安さが投資先としての魅力の一つとなっているベトナムですが、近年、人件費の大幅な増加が続いており、日系企業にとっての大きな懸念事項となっています。
日本貿易振興機構(JETRO)が例年行っている「在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査」によると、在ベトナム日系企業人件費のベースアップ率を項目に加えた2010年から2012年まで、3年連続でベトナムが最も高いベースアップ率となっていました(2010年⇒2011年:14.2%、2011年⇒2012年:17.1%、2012年⇒2013年:17.5%)。また、2013年⇒2014年では10.8%と過年度に比べ減少しましたが、依然として2桁台という高いベースアップ率となっています。
この人件費増加の主要因は、ベトナムにおける法定最低賃金の上昇にあります。ベトナムでは2008年から法定最低賃金の改定が毎年行われており、直近5年間の推移をみると2倍以上の増加となっています(2008年:月額100万ドン(約50米ドル)、2013年:月額235万ドン(約110米ドル))。

【法定最低賃金の推移(月額)】

単位(米ドル)

2013年10月、ベトナム国家賃金評議会は2014年における最低賃金引き上げ案として275万ドン(約140米ドル:前年比17.0%増)を政府に提示しました。なお、ベトナム共産党は、最低限度の生活水準を保証するために2015年までに最低賃金を310万ドン(約150米ドル)まで引き上げるとしており、2015年の最低賃金についても2桁増となることが見込まれています。

2.現地調達率の低さ

部品・原材料の現地調達率の低さもベトナムでビジネスを展開するうえでの懸念事項の一つとなっています。2013年度「在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査」によると、ベトナムにおける部品・原材料の現地調達率は32.2%となっており、中国の64.2%、タイの52.7%などと比べるとかなり低い水準となっています。
 部品・原材料の現地調達率の低さもベトナムでビジネスを展開するうえでの懸念事項の一つとなっています。2013年度「在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査」によると、ベトナムにおける部品・原材料の現地調達率は32.2%となっており、中国の64.2%、タイの52.7%などと比べるとかなり低い水準となっています。

3.インフラの未整備

世界経済フォーラムが毎年発表している「The Global Competitiveness Report(国際競争力レポート)」を見てみると、ベトナムではインフラ全般、特に道路及び鉄道のインフラが未整備であることが分かります。
ベトナムでは慢性的な電力不足から 停電が多く、日系企業担当者の悩みの種となっていましたが、JETRO「ベトナム電力調査2013」によると、「電力不足・停電」を経営上の問題と回答した日系企業の割合は27%と前年の61.6%から激減しました。大型発電所の運転開始などにより電力供給に改善の兆しが見られており、その他のインフラについても改善が待たれています。

【各国のインフラ整備状況】

4.その他

その他ベトナム進出に際して懸念事項として挙げられるものには次のようなものがあります。

・管理者層の人材不足
・上宗教の問題が発生しない(高い仏教徒比率、宗教で戦争しない国民性)
・曖昧な法制度、役人ごとに異なる運用や法解釈

上記に述べたような懸念事項はありますが、事業展開先を検討するにあたりこれらの懸念事項が「致命的」な欠点となるケースは少なく、その意味ではベトナムは事業を行いやすい国の一つであると言えます。しかしながら、ベトナムを事業展開先とする「決定的」な長所が少ないことも事実であり、どのようにベトナムの特色を示していくかが、今後も引き続き経済成長を持続していくうえでの鍵の一つとなりそうです。

【出所】JETRO、世界経済フォーラムなど


ベトナム担当

ベトナム事業準備室 室長
前田 章吾

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