海外デスクレポート

2014年6月29日

ベトナム労働法の概要

ベトナム労働法の概要

執筆:ベトナム担当

ベトナムでは2012年に6年ぶりとなる改正労働法が国会にて承認され、2013年5月1日より施行されています。今回のVietnam News Letterでは、改正点を踏まえたベトナム労働法のポイントを解説します。

1. ベトナム労働法の概要

ベトナム労働法は、次の17項目により構成されており、労働法の下位規範としてDecree(政令)やCircular(通達)など多数の規定が存在します。

ベトナムでは1995年に初めて労働法が施行されて以来、2002年、2006年、2007年と数度にわたり改正が行われ今回の改正は6年ぶりの改正となりますが、これまでの部分的な改正と異なり全面的な変更・追加が行われているため、ベトナムでビジネスを行う日系企業においても改正点を十分に理解しておくことが求められます。

2. ベトナム労働法のポイント① ~労働契約~

ベトナムでは労働契約を締結するにあたり、①無期限契約、②12ヵ月以上36ヶ月以下の有期限契約、③12ヵ月未満の有期限契約のいずれかの形態により締結しなければならないとされています。ここで留意すべきポイントとしては、有期限契約を締結している労働者との契約期限が切れた場合、一度のみに限り有期限契約を再度締結することが出来るということです。そのため、その後再度期限が切れた場合、契約を再締結するためには必ず無期限契約を締結しなければならないこととなります。解雇トラブルを避けるために有期限契約を好む外資系企業も多くありますが、現行規定上はこのように、有期限契約を何度も繰り返して締結することはできないこととなっています。
また、労働者が契約期限満了後も引き続き仕事をしている場合において、労働契約の期限が切れた日から30日以内に新たな労働契約の締結がなされない場合、自動的に無期限契約を締結したものとみなされてしまう(※)ため、労働契約更新のタイミングには特に注意を払っておく必要があります。

(※)当初の契約が12ヶ月以上36ヶ月以下の有期限契約であった場合。12ヶ月未満の有期限契約であった場合には、期限24ヶ月の有期限契約を締結したものとみなされる。

3. ベトナム労働法のポイント② ~時間外労働~

ベトナムでは時間外労働は原則として1ヶ月30時間を超えてはならず、1年で200時間を超えてもいけません。例外として、緊急で遅延できない作業に対処する場合などに限り、労働局に書面で通知したうえで年間300時間までの時間外労働が認められることとなります。

~日本における時間外労働の取扱い~
日本の場合、労働基準法32条により原則として1日8時間、週40時間を超えて労働させることは禁止されていますが、同法36条に基づき、労使協定を結び労働基準監督署に届け出ることによって時間外労働の規定を設けることができます(いわゆる36(サブロク)協定)。この36協定により、1ヶ月45時間、年間で360時間を超えない範囲で時間外労働が認められ、また特別の事情がある場合には「特別条項」付き協定を結ぶことで、1ヶ月45時間、年間360時間を超えた上限を定めることも出来ます。

ベトナムにおける年間200時間の時間外労働上限については、日系企業から兼ねてより延長の要望が出ていましたが、最終的に延長は認められず改正後も200時間のまま据え置きとなりました。上限を超えて労働者を勤務させている場合、労働者の内部告発により行政当局の査察が行われるというケースも想定されるため、規定をしっかりと遵守して労働者の管理を行うことが重要となります。

4. ベトナム労働法のポイント③ ~外国人労働者の労働許可証取得~

ベトナムでは、政府開発援助(ODA)関係の技術者など一定の場合を除きすべての外国人労働者に労働許可証の取得を要求していますが、ベトナム人労働者の雇用機会確保の観点から、外国人労働者の労働許可証取得が年々困難となっています。今回の改正においても、労働許可証の最長期間が3年から2年に短縮されるなど多くの点で規制が厳格となっています。

~「出張」でも労働許可証が必要?~
改正前においては3ヶ月未満の期間ベトナムで働く外国人労働者は労働許可証の取得対象から外れていたため、例えば短期出張などでベトナムを訪問する際は労働許可証を取得する必要はありませんでした。ところが、今回の改正に伴い「3ヶ月未満」という規定が削除されてしまったため、法令を文言通り読み解く限りでは、3ヶ月未満であっても、極端な話、2~3日間の出張であっても労働許可証を取得することが必要と解釈されます。
しかしながら、労働許可証を取得するためには様々な書類を準備する必要があることに加え、単なる短期出張のような場合には労働許可証の取得そのものが不可能なケースがほとんどであり、法令を遵守したくとも出来ないような状況となっています。現時点では、出張などの短期滞在時に労働許可証を保持していないとして罰せられたケースは聞いていませんが、多くの日系企業が気にしているポイントであり、何らかの改正・手当がなされることが待たれます。

 


  • 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
  • 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
  • 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承ください。
 
  • 前田 章吾

    この記事の著者

    前田 章吾
    税理士法人山田&パートナーズ 海外事業部 パートナー
    YAMADA & PARTNERS VIETNAM CO., LTD.
    日本国公認会計士

    2009年9月税理士法人山田&パートナーズに入所し、同シンガポール支店を経て、2013年9月よりベトナム駐在。ベトナムに関する会計税務をはじめ、不正調査・内部統制構築支援、進出・撤退やクロスボーダーM&Aなど幅広い業務を対応している。
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