海外デスクレポート

2023年6月1日

ベトナム移転価格制度 (ベトナム)

ベトナム移転価格制度 (ベトナム)

ベトナムでは移転価格に対する税務調査の件数や調整額は減少しているものの、依然として移転価格に対する十分な整備を日越で行う必要があります。ベトナムにおける移転価格税制は頻繁に改正が行われてきましたが、現在は政令132号(Decree 132/2020/ND-CP)に基づいて運用されています。

1. 関連者の範囲

ベトナムでは関連者取引となる関連者について、国内外を問わず、以下のように定めています。

① 拠出資本の25%以上を直接または間接に保有している
② 最大出資者であり、かつ10%以上を直接または間接に保有している
③ 貸付金が借入企業に拠出した資本金額の25%以上で、当該貸付金が借入企業の中・長期借入金の50%を超えている
④ 一方の企業が他方の役員等総数の半数以上を任命している、または当該決定された役員等が他方の経営活動または財務活動に対する決定権を持っている
⑤ 親族による支配
⑥ 恒久的施設による支配

2. 独立企業間価額

次に関連者取引における独立企業間価格を算定する際に政令132号では、少なくとも5つの比較対象企業から得られた35パーセンタイルから75パーセンタイルのレンジ内で値を決定することが規定されています。

3. 文書化の免除

ベトナムでは、ローカルファイルやマスターファイル、国別報告書などの移転価格文書の備置を義務付けており、税務局よりそれら文書の提出要求があった際には一定の期限内に提出をしなければなりません。ただし、以下の要件に該当する企業は文書化が免除されています。

① 売上高が500億VND(約2.9億円)未満であり、かつ関連者間取引総額が300億VND (約1.7億円)未満である場合
② 事前確認制度(APA)に署名している場合(年次報告書を適切に提出している場合に限る。)
③ 単純な機能のみを有しているだけで、売上高が2,000億VND (約11.7億円)未満であり、無形資産を使用しておらず、かつ、対売上高EBIT(Earnings Before Interest and Tax)が下記以上である場合
 — 販売業の場合 … 5%  
 — 製造業の場合 … 10% 
 — 加工業の場合 … 15%

※①の免除要件は両方を満たしていなければならず、仮に売上高が500億VND(約2.9億円)以上であれば免除要件を満たさなくなり、たとえ関連者間取引総額が300億VND(約1.7億円)未満であったとしても文書化は求められるものと解釈されています。

川越 太介

税理士法人山田&パートナーズ
海外事業部部長 税理士

2006年に大阪の税理士法人にて勤務。2017年に税理士法人山田&パートナーズに入所。 日本国内では相続、事業承継、組織再編やM&Aなどの業務に従事しており、現在、ベトナムにおける税務・会計サービスを提供している。 主な対応可能業務は会計税務顧問、進出支援、不正調査・内部統制、DD、VAL、移転価格コンサルティングなどである。

  • 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
  • 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
  • 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承ください。

 

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