国税庁は、ホームページに「平成29年度における租税条約等に基づく情報交換事績の概要」を発表しました。国税庁は、企業や個人の海外取引を巡る課税逃れを防ぐため、租税条約等の規定に基づき、諸外国と情報交換を行っており、現在、日本の情報交換ネットワークは126の国・地域をカバーするまで拡大しています。
情報交換には主に、「要請に基づく情報交換」、「自動的情報交換」、「自発的情報交換」の3つの類型があります。
このうち、「要請に基づく情報交換」は、個別の納税者に対する調査等において、国内で入手できる情報だけでは事実関係を十分に解明できない場合に、条約等締結相手国・地域の税務当局(外国税務当局)に必要な情報の収集・提供を要請するものです。発表によると、平成29年度に国税庁が外国の税務当局に要請した情報交換の件数は766件で、前年度に比べ61.9%増と大幅に増加しています。地域別にみると、アジア・大洋州の国・地域向けの要請が595件と、全体の8割以上を占めています。
「自発的情報交換」は、国際協力の観点から、自国の納税者に対する調査等の際に入手した情報で外国税務当局にとって有益と認められる情報を自発的に提供するものです。発表によると、平成29年度に国税庁が外国の税務当局から提供された件数は574件と、ほぼ前年並みの件数となっています。
「自動的情報交換」は、法定調書等から把握した非居住者等への支払等(利子、配当、不動産賃借料、無形資産の使用料、給与・報酬、株式の譲受対価等)に関する情報を、支払国の税務当局から受領国の税務当局へ一括して送付するものです。国税庁では、この情報を申告内容と照合し、海外投資所得の申告漏れ等の把握に活用しているそうです。発表によると、平成29年度に国税庁が外国の税務当局から提供された件数は約12万3千件と前年と比べると40%減少しています。
「CRS(Common Reporting Standard:共通報告基準)」に基づく非居住者金融口座情報の自動的情報交換制度もスタートしており、外国税務当局との情報交換がますます進みそうです。