今回は、"非居住者の日本法人株式の譲渡"についてお伝えします。
日本における非居住者(※)が日本法人株式を譲渡した場合、国内法(日本の所得税法)及び租税条約のそれぞれの取扱いを確認する必要があります。一般的に租税条約は国内法に優先します。 (※)国内に支店等を持たない非居住者を前提とします。
(1)国内法の取扱い
非居住者の日本法人株式の譲渡については、日本では原則として非課税です。
ただし、その株式の譲渡が、日本での事業を譲渡したとみなされるもの、日本の不動産を譲渡したとみなされるような場合には課税の対象となります。
具体的には以下の場合が該当します。
① 同一銘柄の日本法人の株式の買い集めをしたものを譲渡した場合
② 同一銘柄の日本法人の株式を25%以上保有している株主が、同一年に5%以上譲渡した場合(事業譲渡類似株式)
③ 日本のゴルフ場利用株式を譲渡した場合
④ 日本の不動産関連法人株式を譲渡した場合
(その法人の総資産の価額の合計額のうち日本にある土地等の価額の総額が50%以上である法人の株式。また、当該法人の株式を50%以上有する法人の株式など。)
⑤ 日本滞在中に日本法人の株式を譲渡した場合
(2)租税条約の取扱い
条約締結相手国によって条約の内容が異なりますが、特に事業譲渡類似株式(上記②)の取扱いに留意する必要があります。
例えば、日米租税条約第13条では、事業譲渡類似株式は源泉地国(法人所在地国)で免税とされていますので、日本の非居住者(米国居住者)が事業譲渡類似株式に該当する日本法人株式を譲渡しても日本で課税はありません。
一方、日星租税条約第13条では、源泉地国(法人所在地国)での課税を認めていますので、日本の非居住者(シンガポール居住者)が同様の譲渡を行った場合には、日本で課税が生じます。
国際取引に関する税務の取扱いについては、国内法と租税条約の両方を確認することが重要です。