国税庁は、ホームページに「平成30事務年度における租税条約等に基づく情報交換事績の概要」を発表しました。国税庁は、企業や個人の海外取引を巡る課税逃れを防ぐため、租税条約等の規定に基づき、諸外国と情報交換を行っており、現在、日本の情報交換ネットワークは135の国・地域をカバーするまで拡大しています。
情報交換には主に、「要請に基づく情報交換」、「自動的情報交換」、「自発的情報交換」の3つの類型があります。
このうち、「要請に基づく情報交換」は、個別の納税者に対する調査等において、国内で入手できる情報だけでは事実関係を十分に解明できない場合に、条約等締結相手国・地域の税務当局(外国税務当局)に必要な情報の収集・提供を要請するものです。発表によると、平成29年度に国税庁が外国の税務当局に要請した情報交換の件数は825件で、前年度に比べ7.7%増と増加しています。地域別にみると、アジア・大洋州の国・地域向けの要請が645件と、全体の8割近くを占めています。
「自発的情報交換」は、国際協力の観点から、自国の納税者に対する調査等の際に入手した情報で外国税務当局にとって有益と認められる情報を自発的に提供するものです。発表によると、平成30年度に国税庁が外国の税務当局から提供された件数は9,666件となっており、国税庁によると、特定の国から大量の情報を受領したことにより、大幅に増加したそうです。
「自動的情報交換」は、国際的な脱税や租税回避行為に対処するために、自動的に情報を交換するものです。国税庁では、昨年よりCRS(CommonReporting Standard:共通報告基準)に基づく非居住者金融口座情報(CRS 情報)やCbCR(Country by Country Report:国別報告事項)の自動的情報交換を開始しています。
CRS情報の自動的情報交換においては、令和元年11 月末時点で、日本の非居住者に係る金融口座情報約47 万件を64か国・地域に提供した一方、日本の居住者に係る金融口座情報約189 万件を85か国・地域から受領しています。国税庁によると、諸外国の税務当局から受領したCRS 情報は、海外にある金融資産及びそこから生じる所得の把握などに効果的であり、国外送金等調書や国外財産調書といった各種調書や既に保有している他の資料情報等と併せて分析を行った上で、課税上問題があると見込まれる納税者を把握し、税務調査を実施しているそうです。
また、国税庁では、このほか従来から法定調書より把握した非居住者等への支払等(利子、配当、不動産賃借料、無形資産の使用料、給与・報酬、株式の譲受対価等)に関する情報を、支払国の税務当局から受領国の税務当局へ一括して送付しています。この情報を申告内容と照合し、海外投資所得の申告漏れ等の把握に活用しているそうです。発表によると、平成30年度に国税庁が外国の税務当局から提供された件数は約16万2千件と前年と比べると31.7%増加しています。
情報交換のネットワークも広がっており、今後も、ますます外国税務当局との情報交換が進みそうです。