税のトピックス

2021年2月15日

  • 国際課税

国税庁、「租税条約等に基づく情報交換事績の概要」を発表

国税庁、「租税条約等に基づく情報交換事績の概要」を発表

 国税庁は、ホームページに「令和元事務年度における租税条約等に基づく情報交換事績の概要」を発表しました。国税庁は、企業や個人の海外取引を巡る課税逃れを防ぐため、租税条約等の規定に基づき、諸外国と情報交換を行っており、現在、日本の情報交換ネットワークは142の国・地域をカバーするまで拡大しています。

 情報交換には主に、「要請に基づく情報交換」、「自動的情報交換」、「自発的情報交換」の3つの類型があります。

 このうち、「要請に基づく情報交換」は、個別の納税者に対する調査等において、国内で入手できる情報だけでは事実関係を十分に解明できない場合に、条約等締結相手国・地域の税務当局(外国税務当局)に必要な情報の収集・提供を要請するものです。発表によると、令和元年度に国税庁が外国の税務当局に要請した情報交換の件数は825件で、前年度に比べ25.7%減少しています。地域別にみると、アジア・大洋州の国・地域向けの要請が490件と、全体の8割近くを占めています。

◆「要請に基づく情報交換」の活用例
 【外国税務当局から受領した情報の活用例】
 CRS 情報から、被相続人 D が X 国の金融機関に口座を保有していることを把握したが、相続人 E の相続税申告書に当該預金口座の記載がなく、相続税の申告漏れが想定された。また、CRS 情報は年末時点での口座残高であり、“相続開始時点”での残高を把握する必要があったものの、残高については日本国内では十分な情報を得ることができなかった。そこで、D の相続開始時点での X 国金融機関口座の預金残高を示す資料の提供を、X 国税務当局に対し要請・入手した結果、D の相続開始時の預金残高が判明し、E の相続税の申告漏れを把握した。 (出典:国税庁「令和元事務年度における租税条約等に基づく情報交換事績の概要」)

 「自発的情報交換」は、国際協力の観点から、自国の納税者に対する調査等の際に入手した情報で外国税務当局にとって有益と認められる情報を自発的に提供するものです。発表によると、令和元年度に国税庁が外国の税務当局から提供された件数は394件となり、特定の国から大量の情報を受領した前年度(9,666件)と比較し、大幅に減少しています。

 「自動的情報交換」は、国際的な脱税や租税回避行為に対処するために、自動的に情報を交換するものです。国税庁では、CRS(CommonReporting Standard:共通報告基準)に基づく非居住者金融口座情報(CRS 情報)やCbCR(Country by Country Report:国別報告事項)の自動的情報交換を開始しています。

 CRS情報の自動的情報交換においては、日本の非居住者に係る金融口座情報約47 万件を65か国・地域に提供した一方、日本の居住者に係る金融口座情報約206万件を86か国・地域から受領しています。国税庁によると、諸外国の税務当局から受領したCRS 情報は、海外にある金融資産及びそこから生じる所得の把握などに効果的であり、国外送金等調書や国外財産調書といった各種調書や既に保有している他の資料情報等と併せて分析を行った上で、課税上問題があると見込まれる納税者を把握し、税務調査を実施しているそうです。

 ◆「CRS情報の自動的情報交換」の活用例
 受領したCRS情報をもとに、調査対象者A個人名義の海外預金口座を把握したが、所得税申告書等には関連する所得及び財産の記載がなく、所得税の申告漏れが想定された。調査の結果、Aは海外で金融商品への投資や不動産の購入、貸付及び売却を行っていることが判明し、これらに関する所得税の申告が漏れていることを把握した。(出典:国税庁「令和元事務年度における租税条約等に基づく情報交換事績の概要」)

 また、国税庁では、このほか従来から法定調書より把握した非居住者等への支払等(利子、配当、不動産賃借料、無形資産の使用料、給与・報酬、株式の譲受対価等)に関する情報を、支払国の税務当局から受領国の税務当局へ一括して送付しています。この情報を申告内容と照合し、海外投資所得の申告漏れ等の把握に活用しているそうです。発表によると、令和元年度に国税庁が外国の税務当局から提供された件数は約15万7千件(前年比△3%)となっています。

 ◆「法定調書情報の自動的情報交換」の活用例
 X国の税務当局から提供された資料をもとに、日本の居住者Bの申告内容を検討したところ、X国のY銀行に預け入れた預金に係る受取利子が日本で申告されていなかったことを把握した。 (出典:国税庁「令和元事務年度における租税条約等に基づく情報交換事績の概要」)

 情報交換のネットワークも広がっており、今後も、ますます外国税務当局との情報交換が進みそうです。

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