国税庁は、「令和5事務年度 法人税等の調査事績の概要」を公表しました。これによりますと、大口・悪質な不正計算が想定されるため調査必要度が高いとされた5万9千件(前年度比△5.4%)に実地調査した結果、総額9,741億円(同+24.9%)の申告漏れが発見されました。法人税と消費税を合わせた追徴税額は3,197億円(同△0.9%)と前年度と比べると数字はわずかに減少していますが、1件当たりの追徴税額を見ると550万円(同+4.9%)と増加しています。
業種別にみると、法人税の不正発見割合の高い業種は、「バー・クラブ」が59.0%とワースト1位となりました。次いで「その他の飲食」42.3%、「外国料理」38.8%の順となっています。
1件あたりの不正所得金額でみると、1位は「その他の化学工業製造」1億991万9千円、次いで「化粧品小売」6,927万2千円、以下「物品賃貸」6,034万1千円、「精密機械器具卸売」5,776万8千円、「映画サービス」4,401万4千円と続いています。
国税庁では、増加する輸出入取引や海外投資を行う法人については、課税上の問題点を幅広く把握し、厳正な調査を実施したそうです。海外取引に係る申告漏れ所得は、総額2,870億円(同+27%)となりました。
ホームページには、主な不正の手口として、輸入仕入金額を水増し計上し、水増し相当分の金員をキックバックさせた事案が紹介されています。
出典:国税庁「令和5事務年度 法人税等の調査事績の概要」
消費税では、実地調査件数が5万7千件(同△6.0%)、追徴税額は1,095億円(同△19.3%)となっています。
また、消費税の不正還付は、いわば国庫金の詐取ともいえる悪質性が高い行為であるため、特に厳正な調査が必要であるとして、消費税還付申告法人に対する実地調査を5,245件(同△6.6%)実施し、390億円(同△30.7%)を追徴しました。そのうち、不正還付は81億円にのぼります。
国税庁は「消費税還付申告に関する国税当局の対応について」をホームページに掲載し、消費税の還付申告の中には、制度を悪用した不正還付事案の他、各取引に関する課税・非課税の区分の誤りや固定資産等の取得時期の誤りなどが見受けられるとしています。そのため、それらの確認に時間を要し、還付を保留する期間が長期にわたる場合があるとして、納税者への理解と協力を求めています。