海外デスクレポート

2020年3月5日

【第2回】新型コロナウィルスの流行期間における中国国内での企業支援策 (労務) 

【第2回】新型コロナウィルスの流行期間における中国国内での企業支援策 (労務) 


2020年2月28日まで新たにリリースされた支援策と一部政策の実行細則は以下の通りです。2020年2月20日までにリリースされた支援策は前回の記事をご確認ください。

一、(全国)社会保険料の納付猶予措置

人社部発〔2020〕11号公告「人力資源社会保障部 財政部 税務総局から段階的に企業社会保険料を減免することについての通知」により、以下の政策を決定した。

新型コロナウィルスの影響で生産経営が困難になった企業(※)は、3種類の社会保険料(失業保険料、養老保険料、労災保険料(以下「社会保険料等」という。))の納付猶予申請が可能となる。猶予期間は原則6ヶ月以内とし、猶予期間内は延滞金が発生しない。

※人社部発〔2020〕11号公告の“新型コロナウィルスの影響で生産経営が困難になった企業とは、交通運輸業、飲食業、宿泊業、観光業(観光エージェント、関連サービス業者及び観光リゾート施設運営業者)の4つの業種に該当する企業である。

二、(地方)社会保険料減免・納付猶予の実行細則

中国国務院は2020年2月18日付の「新型コロナウィルスの流行期間における企業支援措置」を基づいて、各地政府が社会保険料段階的減免についての実行細則と事前通知を相次ぎ発表している。

1. 湖南省実行細則 

1. 湖南省の中小企業(※)に対する2020年2月-6月までの期間中における社会保険料等の企業負担額を免除する。個人負担額については減免しない。

2. 湖南省の大型企業(※)に対する2020年2月-4月までの期間中における社会保険料等の企業負担額を半減する。

3. 申請前3月連続純利益がマイナスになった企業は、社会保険料等の納付猶予を申請することができる。猶予期間は原則上6ヶ月以内とし、猶予期間内は延滞金が発生しない。

(※)企業の分類は、前回の記事をご確認ください。

2. 広東省事前通知 

1. 2020年2月における企業の社会保険料申告は現行の通り実施する。ただし、返却手続きを避けるため、実際に納付する必要は無い。実際に申告すべき金額は、税務機関から申告金額が金額調整を行い企業へ通知を行う。

2. 新型コロナウィルスの影響で一時的に社会保険料等を納付する事ができない企業は、新型コロナウィルスの流行期間が解除された後3ヶ月以内については社会保険料等の納付を猶予し、猶予期間内は延滞金が発生しない。

3. 遼寧省事前通知

1. 2020年2月における企業の社会保険料申告は現行の通り実施する。ただし、返却手続きを避けるため、実際に納付する必要は無い。

2. 2020年2月分の社会保険料等を既に納付した企業は納付金額の返却もしくは別の納付対象期間の納付金額への充当を選択する事ができる。

4. 安徽省事前通知

1. 2020年2月における企業の社会保険料申告を延期する。実際の実行細則は安徽省税務局から後日発行されるため、それまで申告納付は受け付けない。

2.2020年2月分の社会保険料等を既に納付した企業は納付金額の返却もしくは別の納付対象期間の納付金額へ充当するかを選択する事ができる。

5. 江蘇省実行細則(2020年3月2日公布)

1. 江蘇省の中小企業に対する2020年2月-6月までの期間中の社会保険料等の企業負担額を免除する。個人負担額については減免しない。

2. 江蘇省の大企業に対する2020年2月-4月までの期間中の社会保険料等の企業負担額を半減する。

3. 申請前3月連続純利益がマイナスになった江蘇省の企業は、社会保険料等の納付猶予を申請することができる。猶予期間は原則上6ヶ月以内とし、猶予期間内は延滞金が発生しない。

三、(全国)納付済みの減免対象社会保険料の取り扱い

中国国務院は2020年2月18日付の「新型コロナウィルスの流行期間における企業支援措置」では各地域の企業に対して社会保険料等の減免を公告したが、それに伴い企業より、既に支払い済みの2020年2月分の社会保険料等の返却は可能か否かの問い合わせが多くあったことから、国家税務局は2020年2月26日に「段階的に企業社会保険料減免政策を実行することについての通知」税総函〔2020〕33号にて、その取扱いを明確化した。

既に納付済みの2020年2月分の納付済み社会保険料等は、返却または今後の社会保険料等へ充当するかを選択することができる。詳細は各省税務局より指針が発表される見込みである。

四、(全国)人力資源社会保障部/新型コロナウィルスの流行期間における労働関係に関する通知

人力資源社会保障部は『新型コロナウィルスの流行期間における労働関係に関する通知』(人社庁明電[2020]5号)を公布した。

1. 新型コロナウィルス感染者、感染の疑いのある者及び密接接触者の隔離治療、経過観察期間中に、役務を提供できない場合おける勤務先の給与支給義務を明確化にした。その期間において、企業が労働契約法の第40条、第41条の定めに従って労働契約を解除することはできない。新型コロナウィルスの流行期間中に労働契約期間が終了する場合には、従業員の治療期間、観察期間、隔離期間及び緊急措置終了までその労働期限を延長する。

2. 新型コロナウィルスによって生産経営が困難な状況に陥った企業は、給与調整、振替出勤、所定労働時間の短縮について従業員と平等に協議し、解雇を抑えることを提唱する。解雇が少なかった企業は地方の規定に従って、補助金を受け取ることが可能となる。

3. 同期間において、労務仲裁時効は新型コロナウィルス事態の終息までに一時中止とする。

五、(全国)国家移民管理局/ビザ・居留許可等に関する新防疫対策

2月27日に国家移民管理局は出入国管理の調整と出入国秩序の回復の目的のもと、新しい防疫対策を公表した。概要を以下に抜粋する。

1. 防疫期間中、中国で引き続き革新創業の仕事、科学研究に従事する外国人が所有するビザ或いは停留、居留許可ビザが満期になった場合、中国の滞在期間は自動的に2ケ月延長され、延長手続きをする必要がない。

2. 在中外国人のために再入国ビザを事前申請する。防疫期間中、中国に滞在する外国人が所有するビザの入国回数が使用済みになり、短期出国でビジネス貿易、科学研究学術交流などの活動に参加した後に、また入国する必要がある場合には、事前に再入国ビザを申請することができる。中国に滞在する外国人の居留許可が満期した場合、元の居留許可ビザを提出して、口岸ビザを申請することができる。

3. 中国への投資、創業、貿易をする外国人のための口岸ビザの申請、投資、創業、商貿易などの緊急事由で、中国に入国する必要がある外国人は、関連機関の招待状で口岸ビザを申請することができる。

4. 積極的に疫病の予防制御に参与する国内外の人員に、出入国の便利を提供する。医療救護、薬品の研究開発、物資の供給、学術交流などの防疫予防の仕事に参与する中外の人員のために、24時間で緊急手続き証明サービスを提供する。

5. 中国国内外の人員にネット上の出入国証明書を提供する。国内の住民はネット上で出入国証明書の申請を提出することができ、外国人は電子メールと郵送方式でビザ、居留許可書或いは永久滞在申請を提出することができる。

6. 仕事復職者に対して、優先的に出入国関連の手続きをする。企業生産の回復のために、出入国が必要な中国国内外の人員に対して、出入国証明書の承認を優先的に受理し、直ちに出国入国する必要がある場合には、迅速に通関サービスを提供する。

7. 輸出入商品の物資を、優先して迅速に通関へ提供する。防疫物資、国際輸出入商品と、生鮮農産物を輸送する交通輸送機関に対して「ゼロ待ち」の検査を継続して実施する。


  • 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
  • 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
  • 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承ください。

 


(本稿に関するお問い合わせ先)

海外事業部: 植地、張   zhangx@yamada-partners.jp


 

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