2020年4月10日、中国外貨管理局は「外貨管理方法を改善、クロスボーダー事業を促進する通知」(匯発[2020]8号)を公布した。同通知より、コロナウイルス流行期間における煩雑な手続きを改正する。一方で、資本金、外債等資本項目の両替手続きも大幅に簡略化され、海外への貸付(子親ローン)、クロスボーダー対外保証(内保外貸)等特殊業務のハードルも下がる見込みである。コロナウイルスの影響で、中国への依存に危惧している外資系企業が増えた背景を鑑みて、中国当局は外貨管理規制を緩和することにより、外資系企業の経営安定を促進し、ビジネス環境の改善を図る。以下、改正された手続きを抜粋した。
① 資本金、外債等資本項目の両替
現行⇒自由貿易区等特定地域にある企業:エビデンスの事前提出は不要
域外の企業:エビデンスの都度提出が必要
改正後⇒全国でエビデンスの事前提出は不要
(*)外貨管理局が事後検査を実施する。
② 長期未完払戻金の収支
現行⇒180日間を超えた未完払戻金の収支は外貨管理局に登記する必要がある。
改正後⇒5万ドル相当額以下の貨物貿易に伴う長期未完払戻金の収支は180日間を超えても、外貨管理局登記は不要とし、銀行で直接手続きできる。
③ 海外への貸付、クロスボーダー対外保証の満期登録
現行⇒海外への貸付(子親ローン)、クロスボーダー対外保証(内保外貸)については満期時に、外貨管理局で満期登記する必要がある。
改正後⇒下記条件を充足すれば、外貨管理局で登記せずに銀行で満期登記できる。
- 非金融機関法人のクロスボーダー対外保証(内保外貸)が満期となった場合で、保証履行したことが無いこと。
- 非金融機関法人の海外への貸付(子親ローン)が満期となった場合で、元本利息を全額回収できていること。
(*)保証履行、又は海外への貸付の回収不能による延長等手続きは現行のまま外貨管理局に登記する必要がある。
④ 輸出企業における国内外貨借入返済原資の両替規制
現行⇒輸出企業は原則として、輸出に伴って回収された外貨代金は優先的に国内外貨借入の返済に充てなければならない。人民元を外貨に両替して返済原資に充当することは不可。
改正後⇒輸出企業は輸出代金を回収できない状況であり、かつ手元に外貨資金も不足しているため、両替資金を使って返済することができるものとする。
⑤ 外貨資金収支に当たる電子証憑の適用
現行⇒輸出企業は原則として、輸出に伴って回収された外貨代金は優先的に国内外貨借入の返済に充てなければならない。人民元を外貨に両替して返済原資に充当することは不可。
改正後⇒輸出企業は輸出代金を回収できない状況であり、かつ手元に外貨資金も不足しているため、両替資金を使って返済することができるものとする。
⑥ 経常項目にあたる外貨収支の証憑注記
現行⇒経常項目(一般貿易に伴う資金収支等非資本項目業務)の外貨収支の際、銀行は証憑を審査し、証憑に注記記録を残さなければならない。
改正後⇒証憑に注記記録することは任意となった。
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