中国では企業の研究開発投資をさらに促進し国家の科学技術イノベーションを発展させることを目標に掲げており、2022年には中国の研究開発投資の投資総額は3兆元(約60億円)を超え、これは習近平指導部が始まった2012年の約3倍の水準です。日本企業の中国法人においても研究開発投資が活発化しており、製造業の2013年度と2022年度の売上高研究開発費比率の比較では約1.8倍※に拡大しています。企業の研究開発投資を促進させるため、税制面でも様々な優遇措置を設けており、その施策の一つである研究開発費用の追加損金算入の制度は2016年以降、年々その対象業種および控除率が拡大しており、重要な位置を占めています。現行の制度は財政部国家税務総局公告2023年第7号に規定されており、今回はこちらの制度の内容について具体的に紹介します。
※出典:経済産業省 第53回海外事業活動基本調査概要
■ 損金算入額
① 研究開発費を無形固定資産に計上せず、当期の損益に計上する場合
実際発生額の100%を追加で損金算入します。
そもそも損金算入している分を含めると研究開発費の実際発生額の200%が損金算入されます。
② 研究開発費を無形固定資産に計上する場合
無形固定資産の取得原価を200%に引き上げ、引き上げられた取得価額は償却を通じて損金算入します。
■ 適用対象業種
下記以外の業種が対象です。
- タバコ製造業、宿泊・飲食業、卸売・小売業、不動産業、賃貸・ビジネスサービス業、娯楽業など
■ 適用対象期間
2023年1月1日以降
■ 適用対象となる研究開発の活動範囲
新しい科学技術知識の獲得、新しい科学技術知識の創造的な活用、もしくは技術、製品(サービス)およびプロセスの大幅な改善のため、企業が明確な目的を持って継続的に実施する組織的な活動が対象です。ただし以下の活動は対象外です。
- 企業の製品(サービス)の定期的なアップグレード
- 一般に公開されている新しいプロセス、材料、デバイス、製品、サービス、知識の直接採用など、科学的研究成果の直接的応用
- 商業化後の顧客への技術サポート
- 既存の製品、サービス、技術、材料、プロセスへの反復的な変更または単純な変更
- 市場調査、効率調査または経営調査
- 産業(サービス)プロセスの一環または日常的な品質管理、試験分析、修理、保守
- 社会科学、芸術または人文科学分野の研究
■ 適用対象となる研究開発費の範囲
- 人件費:直接研究開発活動に従事する従業員の給料のほか社会保険料・住宅積立金・社外から招へいした研究開発人員の人件費
- 直接的なコスト
① 研究開発活動によって直接消費される材料、燃料および動力のコスト
② 中間試験および製品試作に用いる金型および工作機械の開発および製造費用、固定資産に計上しないサンプル、試作品および一般的な試験方法の購入費用並びに試作品のテスト費用
③ 研究開発活動に用いる機器設備の運用・保守、調整、点検、修理に要する費用、およびオペレーティング・リースによりリースする研究開発活動に用いる機器設備のリース料
- 固定資産の減価償却費:研究開発活動に用いる機器・設備、ソフトウェア、特許権、非特許技術(ライセンス、ノウハウ、設計、計算方法を含む)の減価償却費
- 新製品の設計料、新プロセスの仕様製作費、新薬開発のための治験費、探鉱・開発技術のための実証実験費
- その他関連費用:研究開発活動に直接関連するその他の費用。この費用の総額は控除できる研究開発費の総額の10%を超えてはならない。
- 財政部および国家税務総局が規定するその他の手数料
【 出典 】
※ 財税〔2015〕119号:关于完善研究开发费用税前加计扣除政策的通知_财政部_中国政府网 (www.gov.cn)
※ 財政部 国家税務総局公告2023年第7号:关于进一步完善研发费用税前加计扣除政策的公告_国务院部门文件_中国政府网 (www.gov.cn)
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- 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
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