海外デスクレポート
2020年4月7日
アメリカの新型コロナ救済措置(個人編、法人編のポイント)

執筆:アメリカ担当
3月27日にアメリカで約220兆円のCOVIT-19 に対する救済措置「Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security Act」が可決しました。今回の法律の内容について、個人編、法人編でポイントを記載しました。
【個人編】
(1) 個人のリベート(Recovery Rebate)について
① 米国籍保有者又は米国居住者について、大人1人あたり$1,200、さらに子供1人につき$500を、2020年度の確定申告において税額控除できる。ただし、次の金額を超える場合には減額調整が行われる
- 単身申告者:調整後総所得(AGI)が$75,000を超える場合
- 夫婦合算申告者:AGIが$150,000を超える場合
- 世帯主:AGIが$112,500を超える場合
※米国非居住者については対象外となる。
※子供については、納税者と半年超同居し、生活費の半分超を扶養されている16歳以下の米国籍保有者又は米国居住者が該当する
② 当該税額控除は前払還付の形で、2020年4月に小切手で受け取れる(2018、2019年の確定申告においてDirect paymentの設定をしている場合は銀行振込)前払還付を受けた場合は、2020年の確定申告において税額控除の金額が調整される。前払還付を受けるための手続きは何も必要ない。
(2) リタイアメントプランに係る早期引き出しのペナルティーの一部免除について
① リタイアメントプランに係る早期引き出しがコロナウイルス関連引き出しに該当する場合におけるペナルティー10%について、2020年は$100,000まで免除される。
② リタイアメントプランからローンをする場合の上限が$50,000から$100,000に引き上げる。
③ ①、②のいずれもコロナウイルス関連の引き出しとみなされる場合に限る。
(3) リタイアメント口座からの最低引出し義務について
Required Minimum Distribution (RMD)ルールについて、2020年は引出し義務が免除される。
(4) 失業保険について
州からのものとは別途連邦政府から週$600支給される(最高4か月まで)。
失業保険の受取期間も13週間延長し、通常では失業保険を受け取ることができないフリーランスや自営業、個人請負業者も対象となる
(5) 公認慈善団体への寄付金控除
① 2020年に一定の個人が特定の公認慈善団体に対して行う現金による寄付について、定額控除を適用する納税者は$300を上限に所得控除できる。
② 2020年に行われる公認慈善団体に対する現金による寄付については、控除制限枠の適用を停止。ただし、AGIから他の寄付金控除を差し引いた金額を上限とする。
【法人編】
(1) 繰越欠損金(NOL)について
① NOL(Net Operating Loss)の80%使用制限規定を2018年-2020年まで停止する。
② 2018年1月1日以降、2020年12月31日以前に開始する課税年度に生じる一定のNOLについて5年間の繰戻しの適用を認める。
(2) 支払利息の控除制限緩和について
支払利息の損金算入規定Sec 163(j) の計算の対象となる基準額が、一定の調整をした課税所得(ATI)の30%から50%に、2019年及び2020年において拡充される。
(2020年は全ての企業に適用されるが、2019年はパートナーシップ以外の企業のみ対象で、パートナーシップはATIの30%制限を引き続き使用する必要がある。)
(3) 過年度の法人代替ミニマム税(AMT)税額控除の還付について
過年度に支払ったAMTの税額控除による還付期間について、従来の4年から2年(2018年、2019年)に短縮する。
(4) 雇用継続税額控除制度(Employee Retention Tax Credit)について
営業停止を余儀なくされた、もしくは2020年1月1日以降、前年同四半期比の売上高から50%低下した中小企業は、雇用の維持を条件に賃金(四半期毎に各従業員$10,000が上限)のうち50%まで税額控除を受けることができる。ただし、下記(7)の適用をした場合等には控除できない。)
(5) 社会保険税(Payroll tax)の支払繰延について
2020年末までの納税繰延を認める。納税が遅れた税額については、半額を2021年末まで、残り半額を2022年末までに納める必要がある。
(6) 寄付金控除について
法人の寄付金控除の上限を課税所得の10%から25%に引き上げる。
(7) 中小企業融資(Paycheck Protection Program(PPP))について
過去2年間の資本が$15,000,000未満で、税引後純利益が$5,000,000未満の企業または、従業員500名未満の中小企業を対象として、従業員の給与の支払いを資金使途とした融資制度。中小企業庁が指定した銀行から申請をする必要があり、上限$1,000万として、給与の月平均2.5倍の額までの融資を受けることができる。申し込み期間は4/3から6/30までとなる。なお、給与費用など一定の要件を充足した場合に返済が免除される。(ただし上記(4)の適用をした場合等には返済は免除されない。)
詳細については下記のHPをご参照ください。
https://www.sba.gov/funding-programs/loans/coronavirus-relief-options.
- 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
- 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
- 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承くだ
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この記事の著者
遠藤 元基
Yamada & Partners USA, Inc.
パートナー 日本税理士・公認不正検査士2007年税理士法人山田&パートナーズ東京本部入所、2011年福岡事務所開設・同所長就任。2019年よりベトナム及びタイに駐在。2023年より米国駐在。エステートプランニング、クロスボーダーM&A、グローバル組織再編、海外子会社不正調査など幅広い業務に対応。
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