海外デスクレポート

2014年6月29日

シンガポールの税務情報

シンガポールの税務情報

執筆:シンガポール担当

シンガポールへの投資の大きな魅力の一つに、税負担の低さが挙げられます。法人税率は17%、個人所得税の最高税率は20%となっています。

法人税


法人税 総論

法人税率は17%であり、資本取引から生じるキャピタルゲインは非課税とされているなど、税負担が低さはシンガポールへ投資する大きなメリットの一つとなっています。

【法人税率】

法人税率は一律17%ですが、Partial Tax Exemption(部分免税)という少額所得について一部免税となる制度があるため実効税率は17%を下回ります。
課税所得のうち最初の10,000シンガポールドルまでは75%免税(税率換算で4.25%)、次の290,000シンガポールドルに対しては50%免税(税率換算で8.5%)となっています。
なお、日本における都道府県民税、市町村民税および事業税に相当する地方税はありません。

※2014年6月30日現在 1シンガポールドル=約81.2円

【オフショア所得(国外源泉所得)の取り扱い】

課税対象となる所得の範囲ですが、全世界所得課税を採用する日本とは異なり、シンガポール国外で生じた国外源泉所得はシンガポールに送金されない限り非課税とされます。
さらに、以下の要件を満たす国外源泉所得はシンガポールに送金されたとしても免税となります。

① 2003年6月1日以降にシンガポールに送金されるもの
② 以下に該当する国外源泉所得であること

     - 国外法人からの配当収入
     - 国外支店の事業所得
     - 国外サービス所得

③ 源泉地国における法定の最高税率が15%以上であり、かつ対象となる国外源泉所得がその源泉地国で課税されていること

【キャピタルゲイン非課税】

シンガポールでは、資本取引(Capital nature)から生じるキャピタルゲインおよびキャピタルロスは課税所得の計算上は除外されます。例えば不動産を売却して利益が生じた場合、事業として不動産業を行っている場合には損益取引(income nature)として課税所得となりますが、そうでない場合には資本取引から生じたキャピタルゲインとして非課税となります。なお、資本取引に該当するかどうかについて一部を除き税法上明文化されていないため、専門家に相談されることをお勧めします。

【欠損金の取り扱い】

シンガポールでは過去の欠損金を永久に繰り越して将来所得と相殺することができます。ただし、タックスプランニングを目的とした欠損会社の利用を防止する観点から、実質株主が50%以上変動していないことが求められます。

【納税スケジュール】

決算日が属する暦年の翌年11月末が法人税の確定申告期限となっています。ただし決算日から3ヶ月以内に見積課税所得(Estimated Chargeable Income, ECI)を申告し予定納税する必要があります。

◆スケジュール例:2014年3月期決算の場合◆

 2014年6月末
  見積課税所得(Estimated Chargeable Income, ECI)の申告を行います。
  その後税務当局から見積課税所得にもとづく納税額が通知され、
  当該通知日から1ヶ月以内に予定 納税額を納付します。

 2015年11月末
  所定の様式に従い確定申告を行います。
  その後税務当局から最終課税所得にもとづく納税額が通知されます。
  見積課税所得にもとづく予定納税額と差異がある場合には差額を清算します。

個人所得税


最高税率が20%であり、国外所得は非課税となっています。また、給与所得の雇用主による源泉徴収制度がないため、原則としてすべての個人は確定申告を行う必要があります。

個人所得税の計算期間は日本と同様に暦年(1月から12月)となっていますが、給与所得の雇用主による源泉徴収制度がないため、原則としてすべての個人は確定申告を行う必要があります。

【所得税率】

日本と同様に累進税率ですが最高税率が20%となっています。

例えば課税所得がS$100,000の場合には、S$100,000 ×11.5%-S$5,850=$5,650となります。
税率は日本と比べると低いですが、給与所得者の場合の給与所得控除は一律S$1,000(55歳以上S$6,000、60歳以上S$8,000)であり、給与水準によって比例する日本の給与所得控除と比べると寡少であるといえます。

【オフショア所得(国外源泉所得)の取り扱い】

課税対象となる所得の範囲ですが、全世界所得課税を採用する日本とは異なり、シシンガポール国外で生じた国外源泉所得は非課税とされます。
なお、日本人駐在員の場合、出向元の日本本社が出向先のシンガポール子会社との給与較差を補填するために留守宅手当等を支給することがありますが、シンガポール国内の勤務に起因する所得である場合にはシンガポール国内源泉所得として課税対象となります。

【納税スケジュール】

課税対象期間は日本と同様に暦年(1月から12月)であり、翌年の4月15日が確定申告期限となっています。その後税務当局から納税額が通知され、当該通知日から1ヶ月以内に納付しますが、最長12回の分割納付も認められます。


シンガポール担当
公認会計士

三宅周兵

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