執筆:タイ担当
タイで事業を遂行するうえで会社の設立およびその運営方法を理解しておくことは重要です。
会社設立
進出形態の選択
タイで事業体を設立する場合、組織形態として主に「駐在員事務所」、「支店」、「株式会社」が挙げられます。「株式会社」を選択される場合が一般的ですが、進出の目的や事業計画の段階によっては「駐在員事務所」が選択される場合があります。「支店」を選択されるケースはほとんどありません。
【駐在員事務所(Representative Office)】
駐在員事務所とは、主として情報収集等の限られた「非営利活動」を行うことを目的として登録される事務所です。本格的な事業進出を行う前の市場調査や情報収集の際に利用されます。外国法人たる本社の出先機関の位置づけであり、駐在員事務所それ自体は租税条約上の「恒久的施設:PE」とみなされず、法人税課税を受けない代わりに、収入を得ることや、タイ国内での商談を行う権限は付与されておらず、商行為を行うことができません。
【支店(Branch)】
支店は、駐在員事務所と同じく外国法人たる本社の出先機関の位置づけですが、駐在員事務所とは異なり営業活動を行うことができます。ただし、外国企業が支店の許可を受けるのは非常に困難とされており、通常、短期間の特定プロジェクトや銀行等の金融業にのみ許可が与えられるのが現状です。
【株式会社(Private Limited Company)】
株式会社(Private Limited Company)は、日本のいわゆる株式会社にあたるものであり、最も一般的な進出形態です。サービス業の場合は外国人事業法の規制を受けますが、製造業の場合は、原則100%外資による設立が可能です。他の組織形態と比較して最も自由な活動ができる組織体となります。
会社の機関
タイに設立した株式会社は日本と同様に取締役の選任や株主総会の開催が必要となります。
【株主】
タイでは、非公開会社の設立に際し、3名以上の株主を設置することが義務付けられています。株主が3名を下回ることが解散事由となっているためです。従って製造業の場合には原則100%外資による株式会社の設立が可能ですが、親会社以外の株主を擁立する必要があります。
【株主総会】
株主総会は、設立登記後6カ月以内、その後は12カ月ごとに最低1回開催される定時株主総会と取締役が必要と認める場合などに開催される臨時株主総会があります。設立登記後6カ月以内に開催される株主総会では、議題は特に定められていません。これは実態のない会社の設立を防止することがその立法趣旨となっています。他方、定時株主総会では、株主への決算報告や取締役・会計監査人の選任が主な議題となります。決算書の株主総会への報告が決算日以後4カ月以内とされているため、通常は決算日以後4カ月以内に開催されることになります。
【取締役】
株主総会で設定された基本定款、附属定款に従い、株主総会で選任された取締役が非公開会社を運営します。従って株主と取締役は代理の関係となります。取締役の人数は会社法(民商法典)において規定されていないため、非公開会社では最低1名以上いればよく、国籍の制限もありません。また、居住地に関する明文規定もないことから、国外居住者が取締役となることも可能です。
【取締役会】
非公開会社では取締役は1人でもよいため、取締役会を設置する義務はありません。
決算スケジュール
決算日後4ヶ月以内に株主総会を開催し年次報告書を株主総会に提出し、総会終了後1カ月以内に商業登記局に提出しなければなりません。年次報告書とは「監査済の貸借対照表及び損益計算書」「取締役事業報告書」「監査人の監査報告書」から構成されます。提出する財務諸表はタイの会計基準に準拠して作成されなければならず、言語及び通貨についても、タイ語、タイバーツによって表記することが義務付けられています。