海外デスクレポート

2022年8月10日

仮想通貨の米国課税制度(米国)

仮想通貨の米国課税制度(米国)

米国における仮想通貨の税務

1. 背景

日本では仮想通貨売買に係る個人の所得課税は最高税率55.945%(住民税、復興特別所得税含む)が課されることもあり、売却時等の税負担を抑えるために海外居住を視野にいれていきたいというご相談を受けることがあります。今回は米国における仮想通貨の税務上の取り扱いをお伝えします。

2. 課税制度の概要

米国における仮想通貨は原則Propertyとして取り扱うと規定されています。Propertyの取引の損益を認識するタイミングは、主に売買、他の財産との交換とされており、原則的には法人・個人ともに毎年の含み損益を認識する必要はありません。

このPropertyの損益が売買等により実現した場合には、納税者はCapital gainもしくはCapital lossを認識する必要があります。また、このCapital gain / lossは1年以上保有していたかどうかによりLong / Shortに区分されます。

  • Long TermのCapital gainの税率は個人0–20%とされ、法人は28%となります。
  • Short TermのCapital gainの税率は個人10–37%とされ、法人は28%となります。
  • Capital lossの場合には、Capital gainと相殺され、個人は一部総合課税の所得とも相殺することが可能です。法人・個人ともに相殺しきれなかったLossは翌年以降に繰り越しが可能となります。

3. その他留意点  

米国居住者に求められる情報開示制度の対象財産としては、現状では仮想通貨は入っておらず、日本の取引所(会社)経由で保有している仮想通貨をIRS[1]に報告する必要は今のところないと考えられています。

一方で米国の財務省(FinCEN)は、今後FATCAに基づく開示およびFBARに基づく開示義務を求めていくという発表をしていますので、仮想通貨の情報開示については制度改正を毎年見直して申告する必要があります。


[1] Internal Revenue Service (IRS):米国の「内国歳入庁」

 

  • 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
  • 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
  • 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承ください。
  • 遠藤 元基

    この記事の著者

    遠藤 元基
    Yamada & Partners USA, Inc.
    パートナー 日本税理士・公認不正検査士

    2007年税理士法人山田&パートナーズ東京本部入所、2011年福岡事務所開設・同所長就任。2019年よりベトナム及びタイに駐在。2023年より米国駐在。エステートプランニング、クロスボーダーM&A、グローバル組織再編、海外子会社不正調査など幅広い業務に対応。

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