日本居住者が個人で保有している米国不動産を日本法人(資産管理会社など)に移転、もしくは売却して利益を確定する動きが加速しています。これは、米国不動産は個人所得税において減価償却制度を利用した税金の繰延効果として多く利用されていたものが、令和2年度税制改正において国外中古建物に係る減価償却費について損益通算に制限がかかったことに起因しています。
ただし、個人(日本居住者、日本人)が米国不動産を日本法人へ移転する場合は下記にご留意ください。
(1) 売買実行時の米国源泉税
日本居住者が米国不動産を売却する際には原則FIRPTA(Foreign Investment Real Property Act)という法律に基づき、取引価格の15%が米国所得税として源泉徴収されます。他に州税として別途源泉徴収の義務を課している州もあります
FIRPTAは売却益ではなく取引価格をもとに源泉徴収を求められる制度であり、売買実行時に大きな資金負担となるケースがありますので注意が必要です。一定の要件を満たす場合にはForm8828-Bを米国歳入庁に提出し事前に承認を得ることで、源泉徴収額を減額することが可能です。
(2) 売買実行後の米国個人所得税申告
日本居住者である個人が米国不動産を売却した場合には、売却金額から売却手数料や取得費(減価償却後)を差し引いて計算した譲渡所得について日本と米国において所得税の申告書を提出する必要があります。
・米国の所得税(連邦税)について
米国の譲渡所得税は所有期間により税率が異なり、Long-term(所有期間1年超の譲渡)の場合は譲渡所得に対して0-20%の税率、Short-term(所有期間1年以内の譲渡)の場合は譲渡所得に対して10-37%の税率で課税されます。また、申告期限は原則売却の翌年4月15日(非居住者は+2ヶ月)となります。この米国所得税申告書を提出することで、米国不動産売買時に納めた源泉所得税と適正な税金の差額を精算します。
また、連邦税とは別に不動産所在地によって州税が課税される場合もありますので、州税の申告についても別途検討が必要です。
(3) 日本個人所得税
米国不動産を譲渡して譲渡益が生じた場合には、日本居住者は日本でも譲渡所得税を申告する必要です。税率は長期譲渡の場合20.315%、短期譲渡の場合39.63%となります。ここでの長期と短期は5年超か5年以下での判定となりますが、売却日ではなく売却した日の属する年の1月1日で判定するためご留意ください。
なお、米国不動産譲渡に際して米国で支払った所得税等について外国税額控除を適用することにより、日本と米国の二重課税を排除する必要があります。
(4) まとめ
万が一の際の米国手続きを回避しご家族の負担を軽減できるように日本法人に米国不動産を移転する場合には、売却時に源泉徴収により思わぬコストが生じる可能性があります。また日米の二重課税を排除するためには日本の外国税額控除の適用と、還付金受領時の外国税額控除の調整を行う必要がありますので、専門家にご相談されることをお勧めします。
また、個人所有中に相続が発生する場合は米国遺産税、米国相続手続きが生じご遺族にとっての大きな負担となる場合があります。こちらの留意点は「米国不動産の保有主体の検討(米国遺産税、米国相続手続き)」をご参照ください。
- 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
- 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
- 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承ください。