海外デスクレポート

2020年2月22日

【連載】 ベトナムM&Aの実務 第1回 ベトナム一般概況

【連載】 ベトナムM&Aの実務 第1回 ベトナム一般概況

執筆:ベトナム担当

1. 著しい成長を続けるベトナム

昨年12月、ベトナム統計総局は2019年の実質GDP成長率(推計値)が7.0%であったと発表した。2018年のGDP成長率が7.1%であったことから、2年連続で7%の大台を超えたこととなる。

ベトナムではリーマンショック等の影響による一時的な落ち込みは見せたものの、2014年以降は安定して6%以上の経済成長を続けている。ベトナム政府は2020年におけるGDP成長率目標を6.8%に設定しており、今後も高い経済成長が続くことが予想される。

図表1 過去10年におけるGDP成長率の推移(出所:ベトナム統計総局)

図表2 ベトナム基礎情報(出所:外務省 )

2. 製造拠点・市場の両面からみるベトナム

ASEAN第3位の人口

ベトナムの人口は約9,467万人(2018年)であり、これはASEAN域内においてはインドネシア、フィリピンに次いで3番目の多さである。毎年100万人程度増加しており、ベトナム政府は2025年までに人口が1億人を突破すると見込んでいる。また、ベトナムの人口構成をみると全人口の約4割を25歳未満が占めており、若い国であることが見てとれる。豊富な人口及び若い人口構成は、製造拠点・販売市場の両面から魅力を有している。

● 中間所得層の増加

経済産業省の報告によると、中間所得層(世帯所得5,000~34,999USD)の割合は、2000年の約10.4%から2017年には約38%まで上昇しており、特に、上位の中間所得層(10,000~34,999USD)の割合が増加しているとのことである。
中間所得層の増加に伴いベトナム国内市場も急速に拡大しており、教育や美容健康、医薬品などについては年率20%近く消費が伸びているものも多くある。今後も中間所得層及び富裕層の厚みが増すことにより、堅調に市場が拡大していくことが見込まれている。

● 親日的な国民性

アウンコンサルティング株式会社が2019年に中国、タイ、インドネシアをはじめとした13ヵ国に対する親日度調査を実施したところ、ベトナムでは日本が「大好き」「好き」と回答した人の割合が99%と高い結果となった。実際に筆者がベトナムでビジネス・生活を行う中で、「外国人・外国企業」を理由に不利益を被ることはあっても「日本人・日系企業」を理由に不利益を被るといったことは少ないように思われる。また、価格が高いとの声はあるものの日本製品の品質の高さは広く知れ渡っている。今後の所得水準増加に伴い、日本製品に対する消費ニーズが一層高まることが期待されている。

● ベトナムにおける労働賃金の動向

ベトナムの最低賃金は年々増加しており、2020年における最低賃金(ハノイ、ホーチミンなどの第1地域)は月額4,420,000VND(約2万円)と前年比5.7%の上昇となっている。
10%を超える上昇が続いていた2010年代中頃までと比較すると最低賃金の上昇は落ち着きを見せている。とはいえ、引き続き5~7%の水準での上昇が続いており、ベトナムでの事業展開を行う際には現在の賃金水準のみではなく今後の動向も勘案して計画を策定することが望ましい。

図表3 2020年の最低賃金

図表4 最低賃金(第1地域)の上昇率推移


3. 変わりゆくベトナム

日本貿易振興機構が昨年実施した「2019年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」によると、回答したベトナム進出済日系企業のうち、今後1~2年の事業展開を「拡大」するとした企業の割合は63.9%だった。これは調査対象となった19ヶ国のうち、3番目に多い数値である。2014年に1号店をホーチミンにオープンしたイオンモールは昨年12月にベトナム国内5店舗目となる「AEON MALL HA DONG」をオープンし、殆ど同じタイミングでユニクロもベトナムに初出店した。ベトナムで生活しながら、日本語の看板を目にする機会も多くなったと感じる。

都市部では高層アパートや商業施設の建設が至るところで行われており、ハノイやホーチミンでは都市鉄道の建設が進められている。日本から出張で来られる方からは「来るたびに景色が変わる。」との声を耳にすることもある。数年後には今とはまた大きく異なった景色が広がっているかもしれない。


ベトナム担当

前田 章吾

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