ベトナムで留保された利益を日本の親会社へ還流するために配当という形態で資金を送金するケースがあります。しかし、配当可能額や手続きなど、一定のルールがありますので、解説いたします。
【配当の要件】
- 直前期決算において利益が発生していること
- 累積損失が生じていないこと
- 法人所得税を適正に申告納税していること
- 配当後にベトナム法人が債務の支払いに支障をきたさないこと
【配当可能額の計算】
監査済財務諸表に基づく直前期税引後利益+繰越利益剰余金-再投資金額(ある場合)
【手順と必要資料】
配当金を送金する予定日の7営業日前に、以下の添付資料とともに、配当通知書を管轄の税務当局に申請し、承認を受ける必要があります。承認書とともに銀行へ提出することで配当金として送金することが可能となります。また、送金元口座は資本口座(DICA)から送金することになります。配当後に債務の支払いに支障があるか無いかは、監査済財務報告書や税の納付証明などにて税務局側にて確認、判断されます。
- 日本親会社としての配当決議議事録
- ベトナム子会社における配当決議議事録の作成
- 監査済財務諸表報告書
- 法人税申告書の写し
- 投資登録証明書IRC
- 企業登録証明書ERC
- 法人税等の納付済み証憑等
【課税関係】
ベトナム法人の出資者が法人の場合は、ベトナム側での課税がありませんので、源泉徴収は無しとなります。
個人出資者の場合には、個人所得税が課税され、5%の源泉徴収となります。
このように、配当する場合には自社内部での意思決定のみではなく、税務局での承認が必要であったり、銀行に書類を提出することで中央銀行の審査が行われたりしますので、あらかじめ配当計画を検討の上、事前に手続きを行うことが重要となります。
- 記載された内容は執筆者個人の見解であり、当税理士法人の見解ではないことをご了承ください。
- 本記事の内容は一般的な情報提供であり、具体的な税務・会計アドバイスを含むものではありません。
- 税制改正により、記載の内容と異なる取扱いになる可能性がありますことをご了承ください。