国税庁は、ホームページに東京国税局の文書回答事例として「信託契約の終了に伴い受益者が受ける所有権の移転登記に係る登録免許税法第7条第2項の適用関係について」を公表しました。東京国税局に、納税者から事前照会があり、その事前照会に回答したものです。
登録免許税法では、信託契約の終了により信託財産の所有権が受益者に移転する場合、以下の要件をすべて満たす場合においては、「相続」により所有権が移転したものとみなして登録免許税を軽減する特例を定めています。
(1)信託の信託財産を受託者から受益者に移す場合
(2)当該信託の効力が生じた時から引き続き委託者のみが
信託財産の元本の受益者である場合
(3)当該受益者が当該信託の効力が生じた時における委託者の相続人である場合
本件では、三つのケースにおいて、上記要件を満たすものとして登録免許税が軽減される特例が適用されるか否かについて、照会されています。
<前提>
甲(委託者兼受益者)→不動産を信託財産として委託→X社(受託者)
※受託者X社は甲の唯一の相続人(養子)である乙が代表取締役
※甲死亡後の信託受益権は、乙と丙(甲の妹)が各1/2で取得
ケースⅠ
丙の死亡後、甲の死亡により、乙が本件受益権を単独で取得した場合
本件信託契約が終了し、乙に本件信託の信託財産である本件不動産の所有権が移転
ケースⅡ
甲の死亡により、乙及び丙が本件受益権を各2分の1の割合で取得した場合
本件信託契約が終了し、乙及び丙に本件信託の信託財産である本件不動産の所有権が
それぞれ2分の1の割合で移転
ケースⅢ
甲の死亡後、乙及び丙が本件受益権を各2分の1の割合で取得後、丙の死亡により、
乙が本件受益権に係る単独の受益者となった場合
本件信託契約が終了し、乙に本件信託の信託財産である本件不動産の所有権が移転
今回照会のあったいずれのケースにおいても、要件(1)を満たしています。ケースⅠからⅢの乙が受ける本件不動産に係る所有権の移転登記については、要件(2)及び(3)も満たすことから、本件特例が適用され、相続による所有権の移転登記とみなして登録免許税が課されると解されます。
一方、ケースⅡの丙が受ける本件不動産に係る所有権の移転登記については、丙が相続人ではないため、要件(3)を満たさず特例計算はできない、とされています。