国税庁は、美術品等「時の経過によりその価値の減少しないもの」の取扱いに関する通達の改正を検討しており、改正案についてパブリックコメントを募集しています。
従来は、美術品等を減価償却資産とすべきかどうかの判定は極めて困難であるため、法人税基本通達7-1-1等において一種の外形基準を設けてきました。この通達の発遣後30年余を経過し、経済状況の変化等により、この外形基準が実態とかい離してきたと考えられるため、取扱いの見直しを行うようです。
従来は、次に掲げるようなものを原則として「非減価償却資産」としてきました。
(1) 古美術品、古文書、出土品、遺物等のように歴史的価値又は希少価値を有し、
代替性のないもの
(2) 美術関係の年鑑等に登載されている作者の制作に係る書画、彫刻、工芸品等
(注) 書画骨とうに該当するかどうかが明らかでない美術品等でその取得価額が1点20万円(絵画にあっては、号2万円)未満であるものについては、減価償却資産として取り扱うことができるものとする。
改正案によると、「非減価償却資産」は次に掲げるものとなるようです。
(1) 古美術品、古文書、出土品、遺物等のように歴史的価値又は希少価値を有し、代替性のないもの
(2) (1)以外の美術品等で、取得価額が1点100万円以上であるもの(時の経過によりその価値が減少することが明らかなものを除く。)
ここにいう、「 時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」とは、例えば、会館のロビーや葬祭場のホールのような不特定多数の者が利用する場所の装飾用や展示用(有料で公開するものを除く。)として法人が取得するもののうち、移設することが困難で当該用途にのみ使用されることが明らかなものであり、かつ、他の用途に転用すると仮定した場合にその設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないものが含まれます。
また、取得価額が1点100万円未満であるもの(時の経過によりその価値が減少しないことが明らかなものを除く。)は減価償却資産として取り扱われます。
通達の改正は、11月10日までパブリックコメントの募集を行った後、検討を経て、行われます。改正されると、新通達は平成27年1月1日以後に開始する事業年度(個人は平成27年分以後の年分)において有する美術品等について適用される予定です。
したがって、以前に取得し、現在「非減価償却資産」として管理している美術品等について、改正後の基準により判定した結果、「減価償却資産」として取り扱うことができるものについても、平成27年1月1日以後に開始する事業年度から減価償却資産として償却することが認められますので、注意が必要です。