国税庁は、「令和元事務年度における法人税等の調査事績の概要」を公表しました。これによりますと、大口・悪質な不正計算が想定されるため調査必要度が高いとされた7万6千法人(前年度比△22.9%)に実地調査した結果、5万7千件(同△22.3%)から総額7,802億円(同△43.5%)の申告漏れが発見されました。新型コロナウイルス感染症の影響により、調査件数等は減少していますが、1件当たりの追徴税額を見ると215万6千円(同+9.7%)と増加しています。
業種別にみると、不正発見割合の高い業種では、「バー・クラブ」が63.5%と17年連続のワースト1位となりました。次いで「その他の飲食」42.9%、「外国料理」42.3%、の順となっています。
1件あたりの不正所得金額が大きい業種では、1位は「その他の飲食料品小売」5,812万円、次いで「電子機器製造」5,197万円、以下「建売、土地売買」4,077万円、「鉄鋼製造」3,875万円、「不動産代理仲介」3,263万円と続いています。「バー・クラブ」は、不正発見割合の高い業種では1位となりましたが、金額が相対的に少ないため、不正所得金額が大きい業種の上位には入っていません。
また、国税庁では、調査を行うにあたり、見過ごすと申告納税制度の根幹を揺るがすことになるため、事業を行っているにもかかわらず申告していない法人、無申告法人に対して積極的に調査を実施しました。そのうち、稼動している実態を隠し、意図的に無申告であったものが414件(同+△15.2%)あり、法人税約41億4千5百万円(同△4.4%)の追徴課税をしています。
一方、海外との取引を巡って申告漏れを指摘した企業は3,636社(同△16.7%)で、申告漏れの総額は2,411億円(同△65.4%)に上っています。
国税庁では、主な不正の手口として、外国税務当局からの金融口座情報の提供により、外国の代表者名義口座を把握し、そこに入金された売上除外金額を把握した事例を紹介しています。
国税庁は今後も、租税条約等に基づく情報交換制度を積極的に活用するなど、深度ある調査に取り組むとしています。