国税庁は、「令和2年度租税滞納状況について」をホームページに公表しました。滞納とは、国税が納期限までに納付されず、督促状が発付されたものをいいます。
新規発生の租税滞納額をみると、令和2年度は前年度より7%増加し、5,916億円となりました。前年度より増加しましたが、過去最も新規滞納発生額の多かった平成4年度の約3割(31.3%)と引き続き低い水準となっています。滞納発生割合は0.9%で、前年度から増減はありませんでした。平成16年度以降17年連続で2%を下回り、国税庁発足以来、最も低い割合となっています。
滞納の整理をした額は5,184億円と、前年度より14.9%減少しました。これは新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難となった方に対して、納税猶予制度の特例の適用を優先して行った影響もあるようです。
滞納の整理済額は、前年度と比べて減少して新規発生滞納額を732億円下回ったため、滞納整理中のもの(滞納残高)は、8,286億円(前年度比+9.7%)と増加しました。しかし、ピーク時(平成10年度、2兆8,149億円)の29.4%と、低い水準を保っています。
今年度の新規発生の租税滞納額が増加したのは、新型コロナウイルス感染症の影響により納税が難しくなった場合の特例猶予制度の適用により、前年度の滞納の新規発生が令和2年度にずれ込んだ影響が大きいと考えられます。
この特例制度はあくまでも納税を最大1年間猶予するにすぎないため、猶予された期限内に納税をすることができなければ、新規に滞納が発生することになります。 この特例制度により納税が猶予された税額は、トータルで1兆5,176億円にのぼっています(国税庁HP「『納税の猶予制度の特例』の適用状況(最終集計)」)。新型コロナウイルス感染症の影響による景気悪化が予想されるため、今後の滞納税額の増加が懸念されます。