全国の国税局が、平成28年度に強制調査(査察)で摘発した脱税事件は178件、脱税額は総額で161億円となったことが国税庁のまとめでわかりました(「平成28年度査察の概要」)。
公表データによると、平成28年度に全国の国税局査察部が着手した事案は178件、前年度の未処理事案と合わせて処理した件数は193件で、脱税総額は約161億600万円となりました。前年度と比べると脱税総額は22億6,500万円増加しています。
このうち検察庁に告発したのは132件(前年比17件増)となり、告発率は68.4%と同4.9ポイント増となりました。検察庁に告発した脱税総額も、126億9,200万円(同14億8,800万円増)と前年と比べて増加しています。
税目別に告発件数をみると、法人税は79件(脱税総額65億300万円)と最も多く、全体の60%を占めています。次いで所得税27件(同22億8,200万円)、消費税が23件(同33億7,900万円)となっています。
消費税の告発件数は、前年の12件から倍増し、過去5年間で最も多くの告発となっています。国税庁は、平成28年度においては、消費税の輸出免税制度を利用した大口の不正還付事案など、消費税事案に積極的に取り組んでおり、その成果が件数にあらわれているようです。
業種別にみると、「建設業」の30件が最も多く、次に「不動産業」10件、「金属製品製造」「商品、株式取引」の5件と続いています。
脱税によって得た不正資金は、現金や預貯金、有価証券、FX取引の証拠金として留保されていたほか、居宅や高級外車、高級腕時計、金地金、競走馬等の取得費用、特殊関係人への援助資金、ギャンブルなどの遊興費などに充てられていた事例もみられたようです。また、不正資金の一部が国外の預金口座で留保されるほか、国外のコンドミニアムの取得費用に充てられていた事例や国外のカジノでの遊興に費消していた事例もあったようです。
国税庁は、平成 29 年度においては、査察制度の一罰百戒効果が最大限に発揮できるよう現下の経済社会情勢を踏まえ、特に
○ 消費税受還付事案
○ 無申告ほ脱事案
○ 国際事案
のほか、社会的関心が高く、近年の経済情勢に即した分野で悪質な脱税伏在する可能性の高い事案など、社会的波及効果が高いと見込まれる事案の積極な着手・処理に取り組むとしています。