税のトピックス

2024年12月18日

生前贈与について、よくある誤解例や間違いやすいポイント

生前贈与について、よくある誤解例や間違いやすいポイント

お客様から受けたご相談の中から、生前贈与に関するよくある誤解や注意したいポイントをご紹介します。

 

1. 贈与税がかからない範囲

「110万円までの贈与については贈与税の申告は不要で、贈与税はかかりません」。
こういった謳い文句をご存知の方も多いと思いますが、贈与税がかからない110万円の考え方にはポイントが2つあります。

【ポイント】

  • あげた人ごとではなく、「もらった人ごと」
  • あげる都度の金額ではなく、「暦年1月1日~12月31日までの期間の合計額」

 

贈与税がかからないと誤解しやすい2つのケースをご紹介します。

1つ目は、祖父母から毎年110万円をもらっている人が、父母からも110万円をもらったケースです。祖父母から110万円をもらっただけの場合には、贈与税はかかりません。しかし、父母からも110万円をもらった場合、もらった人を基準に考えると合計220万円の贈与を受けていることになるため、贈与税の申告が必要となり、贈与税がかかります。

2つ目は、毎年110万円までの現金をもらっている人が、その現金とは別に車の頭金を出してもらったケースです。この場合、現金と車の頭金の金額の合計が110万円を超えているため、贈与税の申告が必要となり、贈与税がかかります。

 

考え方のポイントが抜け落ちてしまっていると、贈与税がかからないと思っていたのに実は贈与税の申告が必要だった、贈与税がかかったという失敗につながる恐れがあるため注意が必要です。

 

2贈与の成立

贈与の成立には、あげた側の「あげた」という認識、もらった側の「もらった」という認識が必要です。親や祖父母が、子や孫名義の通帳を作って残高を積み上げても、子や孫にもらった認識がなければ贈与は成立しません。将来相続税の税務調査があった場合、子や孫本人にもらった認識のない預金等は、名義人である子や孫の財産ではなく親や祖父母の相続財産であると指摘される可能性があります。

 

そのため、「あげた」「もらった」という認識を証拠として残しておくために、贈与契約書を作成することをおすすめします。子や孫が未成年者の場合には、親が契約書に署名押印するなどご対応ください。

 

3. 夫婦間の資金の移動

夫婦の片方がもう片方のお金を管理しているというケースも多くあります。配偶者のお金を管理すること自体に問題はありませんが、いくつか注意点があります。

それは、夫婦間であっても「あげた」「もらった」が成立すると贈与税の対象になることや、逆にその認識がなければ将来配偶者名義の通帳残高について名義財産と指摘される可能性があることです。

資金移動の際には、通帳にその理由や目的のメモを残したり、贈与の場合は贈与契約書、貸し借りの場合は金銭消費貸借契約書を作成したりするなど、書面で記録を残すことをおすすめします。

 

4. 保険の契約者変更

保険の契約者を変更した場合、変更したその時に贈与になると誤解される方が多いのですが、実はそうではありません。

贈与のタイミングは契約者を変更した時ではなく、その保険の解約時や満期時であり、保険料を負担した方から解約金や満期金を受け取った方(保険金受取人)への贈与になります。

このような場合には契約者変更の時期と解約や満期の時期にズレが生じてしまうことから、贈与税の申告が必要であると気付きにくく、申告漏れが発生しやすいのでご注意ください。

 

5. まとめ

贈与の成立には、あげた側ともらった側の双方の認識が必要です。「あげた」「もらった」という認識を証拠として残しておくために、贈与契約書の作成をおすすめします。

また、①あげる人が1人でないとき、②贈与が複数回あるとき、③家族間でお金が移動するとき、④保険が関係するときは、贈与税の申告が必要であると気付きにくいため、注意が必要です。

 

執筆:市川 和秀 ichikawak@yamada-partners.jp

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