全国の国税局が、2015年度に強制調査(査察)で摘発した脱税事件は189件、脱税額は総額で138億円となったことが国税庁のまとめでわかりました(「平成27年度査察の概要」)。
公表データによると、15年度に全国の国税局査察部が着手した事案は189件、前年度の未処理事案と合わせて処理した件数は181件で、脱税総額は約138億4,100万円となりました。前年度と比べると脱税総額は11億円減少しており、41年ぶりの低水準です。
このうち検察庁に告発したのは115件(前年比3件減)と前年度と比べ微減ですが、告発率は63.5%と同1.3ポイント増となりました。一方、脱税総額は112億400万円(同11億4,200万円減)、1件当たりの脱税額も9,700万円(同1,300万円減)と前年と比べて減少しています。
脱税によって得た不正資金は、現金や預貯金、有価証券として留保されていたほか、絵画や高級車の購入、ギャンブルなどの遊興費、特殊関係人に対する資金援助などに充てられていた事例もみられたようです。また、不正資金の一部が海外の預金口座で留保されていた事例もあったようです。
業種別に告発件数をみると、「建設業」の15件が最も多く、次に「不動産業」12件、「クラブ・バー」7件と続いています。また国税庁は、ネットワークビジネスと称して、新規会員を勧誘することで多額の手数料を得ていた、いわゆる「マルチ商法」や、運用実態がないにもかかわらず、海外投資の名目で出資金を募っていた、いわゆる「投資詐欺」など、その事業活動自体に違法または不当な行為が含まれるとして社会問題化した業種についても積極的に告発したとしています。
税目別にみると、法人税は69件(脱税総額56億8,700万円)と最も多く、全体の60%を占めています。次いで所得税25件(同30億9,200万円)、消費税が12件(同10億4,900万円)となっています。
なお、同年度に査察事件で判決が下された一審判決の件数は133件ですが、そのすべてに有罪判決、2人に実刑と厳しい判決が下されています。