政府・与党が「令和2年度税制改正」において、海外資産申告漏れへの罰則を強化する方向で検討しているという報道がありました。
現在、海外に5,000万円超の資産を持つ人は、毎年1回、資産の種類や金額をまとめて記載した「国外財産調書」を国に提出する義務があります。平成29年に提出された国外財産調書は、9,551件で、資産総額3兆6,662億円に上ります。
この国外財産調書制度には、自主的に自己の情報を記載し提出するものであることから、次のようなインセンティブ措置が設けられています。
(1) 加算税の軽減措置(△5%) 提出された調書に記載された国外財産に係る所得税・相続税の申告漏れが生じたとき 加算税5%軽減。
(2) 加算税の加重措置(+5%) 調書の提出がない又は調書に記載のない国外財産に係る所得税の申告漏れが生じたとき 加算税5%加重。
国税庁が国外財産調書の提出者及び提出が必要と見込まれる者に対して税務調査を行ったところ、(1)軽減措置は168件(増差所得等金額45億7,467万円)、(2)加重措置は194件(同51億1,095万円)適用されています。
税務調査の際、国税側が、海外資産の実態や資金の出入りを把握するため、銀行口座の入出金の記録や不動産の賃貸借契約など書類の追加提出を求めるケースがありますが、行政処分の対象にならないこともあり、応じない人も少なくないそうです。この場合には、外国税務当局に対して情報交換を要請することになりますが、相手国の事情に応じ回答を得るのに時間を要し、申告漏れがわかっても更正等の期間が過ぎている場合も考えられます。
そこで政府・与党は、令和2年度の税制改正において、税務調査を行った際に納税者が必要な資料の提示・提出をしなかった場合には、1.申告漏れに対する加算税を加重する、2.外国税務当局に情報交換の要請をした場合には、要請から一定期間は更正等を可能にすることを検討しているようです。
実際に改正されるかどうか、改正される場合の内容は、税制改正大綱により明らかになります。「令和2年度税制改正大綱」は今月中旬に公表予定です。