国税庁は、「平成30年分国外財産調書の提出状況について」をホームページに公表しました。資料によると、平成30年分の国外財産調書の提出件数は9,551件(前年比+4.3%)、総財産額は3兆8,965億円(同+6.3%)といずれも前年と比べて増加しています。
国外財産調書は、その年の12月31日においてその価額の合計額が5千万円を超える国外財産を有する居住者が提出する調書です。国外財産調書には、国外に有する財産の種類、数量及び価額その他必要な事項を記載して、翌年3月15日までに税務署長に提出しなければなりません。
財産の種類別でみると、有価証券が2兆1,135億円と最も多く、全体の54.2%を占めています。次に、預貯金が5,771億円、建物4,360億円と続いています。国税局別では、東京局が6,413件(2兆8,458億円)と最も多く、次いで大阪局が1,405件(5,282億円)、名古屋局が719件(2,190億円)となり、三局の合計で全体の85%以上を占めています。
国外財産調書制度には、自主的に自己の情報を記載し提出するものであることから、次のようなインセンティブ措置が設けられています。
(1) 加算税の軽減措置(△5%)
提出された調書に記載された国外財産に係る所得税・相続税の申告漏れが生じたとき 加算税5%軽減。
(2) 加算税の加重措置(+5%)
調書の提出がない又は調書に記載のない国外財産に係る所得税の申告漏れが生じたとき 加算税5%加重。
国税庁が国外財産調書の提出者及び提出が必要と見込まれる者に対して実地調査を行ったところ、(1)軽減措置は194件(増差所得等金額49億8,814万円)、(2)加重措置は245件(同112億9,380万円)適用されました。
また令和2年度税制改正では、税務調査の際に、国外財産調書に記載すべき国外財産に関する書類の提示等が一定期間内にない場合には、加算税の加重措置等を講じることが検討されています。
国税庁では、引き続き制度の広報・周知に努め、適正な提出を確保することを通じて国外財産に係る課税の一層の適正化に努めるとしています。