国税庁は、「令和元年度租税滞納状況について」をホームページに公表しました。滞納とは、国税が納期限までに納付されず、督促状が発付されたものをいいます。
新規発生の租税滞納額をみると、令和元年度は前年度より10%減少し、5,528億円となりました。過去最も新規滞納発生額の多かった平成4年度の約3割(29.2%)と引き続き低い水準となっています。滞納発生割合も0.9%と、平成16年度以降16年連続で2%を下回りました。この割合は国税庁発足以来、最も低い割合となっています。
ただし、新規発生の租税滞納額が減少したのは、新型コロナウイルス感染症の影響により納税が難しくなった場合の特例猶予制度の適用を受けたケースが多かった影響もあると考えられます。この特例制度による納税猶予税額は、4月30日以降約2か月間で2,618億円にのぼっています(国税庁HP「『納税の猶予制度の特例』の適用状況(令和2年4~6月分)」)。
滞納の整理をした額は6,091億円と、前年度より7.1%減少しました。これは令和2年3月以降、新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難となった方に対して、納税猶予制度の特例の適用を優先して行った影響もあるようです。
滞納の整理済額は前年度と比べて減少しましたが、新規発生滞納額5,528億円を564億円上回ったため、滞納整理中のもの(滞納残高)は、7,554億円(前年度比△6.9%)となりました。平成11年度以降、21年連続で減少し、ピーク時(平成10年度、2兆8,149億円)の26.8%になっています。
令和元年度の租税滞納状況では、新規発生額や滞納残高が減少していますが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う納税猶予の特例制度によるところも大きいと考えられます。この特例はあくまでも納税を最大1年間猶予するにすぎないため、猶予された期限内に納税をすることができなければ、新規に滞納が発生することになります。新型コロナウイルス感染症の影響による景気悪化が予想されるため、今後の滞納税額の増加が懸念されます。