全国の国税局が、令和2年度に強制調査(査察)で摘発した脱税事件は111件、脱税額は総額で約91億円となったことが国税庁のまとめでわかりました(「令和2年度査察の概要」)。
公表データによると、令和2年度に全国の国税局査察部が着手した事案は111件、前年度の未処理事案と合わせて処理した件数は113件で、脱税総額は90億5,000万円となりました。前年度と比べると脱税総額は29億3,500万円減少しています。
このうち検察庁に告発したのは83件(前年比33件減)、告発率は73.5%(同3.2ポイント増)となり、告発率は平成20年度以来の高水準となりました。検察庁に告発した脱税総額は、69億2,600万円(同23億5,000万円減)と前年と比べて減少しています。
税目別に告発件数をみると、最も多い税目は法人税の55件(脱税総額38億2,600万円)です。次いで消費税の件数は18件(同19億7,500万円)、所得税8件(同16億700万円)となっています。
また、国税庁では、消費税事案、無申告事案、国際事案、時流に即した脱税事案など、社会的波及効果が高いと見込まれる事案に対して積極的に取り組んだそうです。具体的には、金地金の輸出販売を装った消費税不正還付事案や海外法人を利用して法人税を免れた宝飾品製造会社を告発した事案などが事例として紹介されています。
また、令和2年度中には、全国初の告発となった暗号資産事案について有罪判決が出されています。
国税庁では、令和2年度は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、身体的距離の確保、マスクの着用、手洗いの徹底などの感染防止策を講じた上で、効果的かつ効率的な査察の実施に努めたそうです。
新型コロナウイルス感染症の影響もあり、脱税総額や摘発件数、告発件数は減少していますが、1件当たり脱税額が8,000万円と前年より9.6%増加していることから、効果的かつ効率的に査察を実施したことがうかがえます。