令和6年度(2024年度)税制改正に対する各省庁の要望が、 財務省・総務省のホームページに公表されました。各省庁の要望は令和5年度で期限切れとなる措置の拡充・延長のほか、制度・措置を新設する要望もあります。
経済産業省の要望内容を見ると、「世界に伍して競争できる投資支援と構造的・持続的な賃上げの実現」「スタートアップ・エコシステムの更なる強化」「中小企業・小規模事業者の事業承継・成長支援等」「経済のデジタル化・グローバル化に対応した事業環境の整備」「GXの実現に向けた、強靭なサプライチェーンの構築」の5項目を掲げて要望しています。
主な要望項目は、下記のとおりです。
(1) 世界に伍して競争できる投資支援と構造的・持続的な賃上げの実現
- 戦略物資生産基盤税制の創設
- イノベーションボックス税制の創設
- カーボンニュートラル投資促進税制の拡充
- 賃上げ税制の長期化および仕事と子育ての両立や女性活躍を支援する企業に対する支援措置
- 成長志向の中堅・中小企業の支援措置
(2) スタートアップ・エコシステムの更なる強化
- 税制適格ストックオプションの利便性を向上させるための見直し
- エンジェル税制の利活用拡大措置、上場ベンチャーファンドへの投資を促す措置の検討
- オープンイノベーション促進税制の延長
- パーシャルスピンオフ税制の恒久化
- 暗号資産の期末時価評価課税に係る見直し
(3) 中小企業・小規模事業者の事業承継・成長支援等
- 法人版及び個人版事業承継税制について、特例承継計画の提出期限の延長
- 中小M&A準備金税制の延長等
- 賃上げに取り組む赤字中小企業等を対象とした繰越控除措置の創設
(4) 経済のデジタル化・グローバル化に対応した事業環境の整備
- プラットフォーム課税(消費税)の導入など、国境を越えたデジタルサービスに対する課税のあり方を検討
- 外国子会社合算税制の手続き等の簡素化等による企業の事務負担軽減
(5) GXの実現に向けた、強靭なサプライチェーンの構築
- カーボンニュートラル投資促進税制の拡充(再掲)
- 海外投資等損失準備金の延長
今回の経済産業省の要望を見ると、「戦略物資生産基盤税制」と「イノベーションボックス税制」という2つの新制度創設が目玉になりそうです。
◆ 戦略物資生産基盤税制の創設
“世界に伍して競争できる投資支援パッケージ”の一環として、戦略的に重要な物資の国内生産等に対し、生産活動に応じて事業投資全体に対する支援を行うために創設が要望される制度です。
現行制度では投資時に投資減税等の措置はありますが、投資後には特に税の優遇措置はありません。本制度は、投資後、生産・販売量に応じた長期間にわたる税額控除や繰越控除を認めることにより、日本国内で長期間、生産・販売を行うインセンティブを与えようとするものです。
出典:経済産業省「令和6年度税制改正に関する経済産業省要望【概要】」
◆ イノベーションボックス税制の創設
イノベーションボックス税制は、研究開発の成果として生まれたアウトプットに着目し、特許等の知財財産から生じる所得に優遇税率を適用する制度です。研究開発拠点としての立地競争力を向上し、民間の無形資産投資を後押しする観点から、同制度の創設が要望されています。
出典:経済産業省「令和6年度税制改正に関する経済産業省要望【概要】」
各省庁の要望が出そろうと、いよいよ税制改正の議論が始まります。今後の税制改正の議論の行方が注目されます。