国税庁は、ホームページに熊本国税局の文書回答事例として「定年を延長した場合に従業員に対してその延長前の定年に達したときに支払う退職一時金の所得区分について」を公表しました。熊本国税局に、納税者から事前照会があり、その事前照会に回答したものです。
今回照会のあった事例の事実関係は、下記のとおりです。
(1)就業規則を改定し、従業員の定年を60歳から64歳に延長する。
(2)この定年延長に伴い、賃金規則を改定し、従業員の入社時期にかかわらず、一律で延長前の定年(旧定年)である満60歳に達した日の属する年度末の翌月末までに退職一時金(本件退職一時金)を支給する。
(3)本件退職一時金は、旧定年に達した日の属する年度末までを基礎として計算し、定年を延長した期間は本件退職一時金の計算の基礎に含めず、その期間に対する退職金の支給はしない。
この本件退職一時金は、引き続き勤務する従業員に対して支給するものであるため、本来の退職所得とはいえませんが、所得税基本通達30-2(5)《引き続き勤務する者に支払われる給与で退職手当等とするもの》に定める給与に該当すると考えられることから、退職所得として取り扱ってよいか、熊本国税局に納税者より事前照会がありました。
熊本国税局では、定年延長前に入社している従業員に対する退職一時金については、退職所得として取り扱っても差し支えないとしていますが、定年延長後に入社する従業員に対する退職一時金については、次のように回答しています。
「所得税基本通達30-2(5)は、労働協約等を改正していわゆる定年を延長した場合を前提としているところ、本件退職一時金のうち定年延長後に入社する従業員に対するものについては、その支給対象者は、既に定年の延長が就業規則等で決定した後に雇用されることから、雇用の開始時点で定年を64歳として採用されるため、労働協約等を改正していわゆる定年を延長した場合には該当しません。したがって、本件退職一時金のうち定年延長後に入社する従業員に対するものについては、同通達は適用されず、退職所得として取り扱われるとは限りません。」
なお、熊本国税局は回答内容について、あくまでも熊本国税局としての見解であり、事前照会者の申告内容等を拘束するものではないとしています。