国税庁は、所得税等の調査についてまとめた「平成30事務年度における所得税及び消費税調査等の状況について」を公表しました。この調査によると、国税庁が今年6月までの1年間に行った所得税の調査等件数は622,637件(対前年比1.9%減)で、所得金額9,038億円(同増減なし)の申告漏れが把握され、1,195億円(同0.1%減)が追徴課税されています。
1件当たりの事業所得の申告漏れ所得金額が高額な業種をみると、「風俗業」が2,685万円でトップとなり、2位は「キャバクラ」(2,278万円)、3位は「経営コンサルタント」(2,045万円)となりました。この他、「システムエンジニア」、「特定貨物自動車運送」と続いています。
申告漏れ割合(申告漏れ所得/(調査前所得+申告漏れ所得))を業種別に見ると、「キャバクラ」が92.9%、「風俗業」91.5%と高く、現金取引の多い業種が申告漏れ割合も高くなる傾向にあります。
また国税庁は、いわゆる富裕層による資産運用の多様化・国際化が進んでいることを念頭に置き、積極的に富裕層に対する調査を実施しています。調査結果を見ると、1件当たりの申告漏れ所得金額は1,436万円(同11.9%増)となっています。1件当たりの追徴税額は383万円(同13%増)で、所得税の実地調査全体の金額と比較すると2.1倍と高い数字となりました。特に、海外投資等を行っている富裕層に限定すると、1件当たりの追徴税額は914万円となり、調査全体の5.1倍とさらに高額となっています。
国税庁では「経済社会の国際化に適切に対応していくため、有効な資料情報の収集に努めるとともに、海外投資を行っている個人や海外資産を保有している個人などに対して、国外送金等調書、国外財産調書、租税条約等に基づく情報交換制度のほか、CRS情報などを効果的に活用し、積極的に調査を実施」しているとしており、今後も富裕層に対する調査は重点項目となりそうです。