国税庁は、所得税等の調査についてまとめた「令和元事務年度における所得税及び消費税調査等の状況について」を公表しました。この調査によると、国税庁が今年6月までの1年間に行った所得税の調査等件数は431,495件(対前年比29.3%減)で、所得金額7,891億円(同12.7%減)の申告漏れが把握され、1,132億円(同5.3%減)が追徴課税されています。新型コロナウイルス感染症の影響もあり、件数も金額も減少していますが、1件当たりの金額で見ると、1件当たり申告漏れ所得金額は183万円(同23.6%増)、1件当たりの追徴税額は26万円(同30%増)と増加しています。
1件当たりの事業所得の申告漏れ所得金額が高額な業種をみると、「風俗業」が3,373万円でトップとなり、2位は「経営コンサルタント」(3,321万円)、3位は「キャバクラ」(2,873万円)となりました。この他、「太陽光発電」、「システムエンジニア」と続いています。
国税庁ではさらに、シェアリングエコノミー等の新たな分野の経済活動をはじめ、インターネット取引を行っている個人に対しては、資料情報の収集・分析に努め、積極的に調査を実施しています。調査結果を見ると、1件当たりの申告漏れ所得金額は1,264万円(同1.6%増)となっています。1件当たりの追徴税額は349万円(同27.4%増)で、所得税の実地調査全体の金額(222万円)と比較すると1.6倍と高い数字となりました。
また国税庁は、いわゆる富裕層による資産運用の多様化・国際化が進んでいることを念頭に置き、積極的に富裕層に対する調査を実施しています。調査結果を見ると、1件当たりの申告漏れ所得金額は1,767万円(同123.1%増)となっています。1件当たりの追徴税額は581万円(同51.7%増)で、所得税の実地調査全体の金額(222万円)と比較すると2.6倍と高い数字となりました。特に、海外投資等を行っている富裕層に限定すると、1件当たりの追徴税額は1,571万円となり、調査全体の7.1倍とさらに高額となっています。
国税庁では「経済社会の国際化に適切に対応していくため、有効な資料情報の収集に努めるとともに、海外投資を行っている個人や海外資産を保有している個人などに対して、国外送金等調書、国外財産調書、租税条約等に基づく情報交換制度のほか、CRS情報などを効果的に活用し、積極的に調査を実施」しているとしており、今後も富裕層に対する調査は重点項目となりそうです。
(令和3年10月18日 国税庁 正誤表公表に伴い、修正)