国税庁は、所得税等の調査についてまとめた「令和2事務年度における所得税及び消費税調査等の状況」を公表しました。この調査によると、国税庁が今年6月までの1年間に行った所得税の調査等件数は502,298件(対前年比16.4%増)と前年より増加しています。
新型コロナウイルス感染症の影響もあり、実地調査の件数は23,804件(同60.1%減)と大幅に減少しましたが、文書等による接触方法を積極的に組み合わせることにより、調査等の合計件数は増加しています。
申告漏れ所得金額は5,577億円(同29.3%減)、追徴課税は732億円(同35.3%減)となっています。申告漏れ所得金額、追徴税額が高額となる実地調査の件数が減少していることが大きく影響しているようです。
1件当たりの事業所得の申告漏れ所得金額が高額な業種をみると、「プログラマー」が4,927万円でトップとなり、2位は「畜産農業(肉用牛)」(3,515万円)、3位は「内科医」(3,339万円)となりました。この他、「キャバクラ」「太陽光発電」、「建築士」と続いています。
国税庁ではさらに、シェアリングエコノミー等の新たな分野の経済活動をはじめ、インターネット取引を行っている個人に対しては、資料情報の収集・分析に努め、積極的に調査を実施しています。
調査結果を見ると、1件当たりの申告漏れ所得金額は1,872万円(同48.1%増)となっています。1件当たりの追徴税額は494万円(同41.5%増)で、所得税の実地調査全体の金額(275万円)と比較すると1.8倍と高い数字となりました。
取引区分別の 1件当たりの申告漏れ所得金額を見ると、ネットトレードによる所得漏れが最も多く、次いでネット広告となっています。
また国税庁は、いわゆる富裕層による資産運用の多様化・国際化が進んでいることを念頭に置き、積極的に富裕層に対する調査を実施しています。
調査結果を見ると、1件当たりの申告漏れ所得金額は2,259万円(同27.8%増)となっています。1件当たりの追徴税額は543万円(同6.5%減)で、所得税の実地調査全体の金額(275万円)と比較すると1.9倍と高い数字となりました。特に、海外投資等を行っている富裕層に限定すると、1件当たりの追徴税額は879万円となり、調査全体の3.2倍とさらに高額となっています。
国税庁では「経済社会の国際化に適切に対応していくため、有効な資料情報の収集に努めるとともに、海外投資を行っている個人や海外資産を保有している個人などに対して、国外送金等調書、国外財産調書、租税条約等に基づく情報交換制度のほか、CRS情報などを効果的に活用し、積極的に調査を実施」しているとしており、今後も富裕層に対する調査は重点項目となりそうです。