国税庁は、所得税等の調査についてまとめた「令和3事務年度における所得税及び消費税調査等の状況」を公表しました。この調査によると、国税庁が今年6月までの1年間に行った所得税の調査等件数は599,747件(対前年比19.4%増)と前年より増加しています。
実地調査の件数は31,407件(同31.9%増)、申告漏れ所得金額は7,202億円(同29.1%増)、追徴課税は1,058億円(同44.5%増)となり、いずれも新型コロナウイルス感染症の影響が大きかった前年より大幅に増加しています。
1件当たりの申告漏れ所得金額は1,337万円(同6.4%増)です。1件当たりの事業所得の申告漏れ所得金額が高額な業種をみると、「経営コンサルタント」が2,266万円で最も多く、2位は「システムエンジニア」(2,150万円)、3位は「ブリーダー」(2,136万円)となりました。この他、「商工業デザイナー」「不動産代理仲介」、「外構工事」と続いています。
国税庁では、インターネット取引を行っている個人に対して、積極的に調査を実施しています。
シェアリングエコノミー等新分野の経済活動に係る取引を行っている個人に対する調査結果を見ると、調査件数は839件。1件当たりの申告漏れ所得金額は1,382万円(同6.5%減)、1件当たりの追徴税額は266万円(同11.3%減)となりました。
調査件数を取引区分別に見ると、シェアリングビジネス273件、ネット通販等257件 、その他166件、ネット広告59件、デジタルコンテンツ50件、ギグワーカー34件となっており、新しいビジネスモデルに関する調査を強化している様子がうかがえます。
また、国税庁では、経済社会の国際化に適切に対応していくため、海外投資を行っている個人や海外資産を保有している個人などに対して、積極的に調査を実施しています。
調査結果を見ると、申告漏れ所得金額の総額は754億円(同55.1%増)、1件当たりの申告漏れ所得金額は過去最高の3,690万円(同64.8%増)となっています。
いわゆる富裕層に対しては、資産運用の多様化・国際化が進んでいることを念頭に置き、積極的に調査を実施しているそうです。
1件当たりの申告漏れ所得金額は3,767万円(同66.8%増)となっています。1件当たりの追徴税額は1,067万円(同96.5%増)で、所得税の実地調査全体の金額(256万円)と比較すると4.2倍と過去最高の高い数字となりました。
特に、海外投資等を行っている富裕層に限定すると、1件当たりの追徴税額は2,953万円となり、調査全体の11.5倍とさらに高額となっています。
国税庁では「経済社会の国際化に適切に対応していくため、有効な資料情報の収集に努めるとともに、海外投資を行っている個人や海外資産を保有している個人などに対して、国外送金等調書、国外財産調書、租税条約等に基づく情報交換制度のほか、CRS情報などを効果的に活用し、積極的に調査を実施」しているとしており、今後も海外投資等をした富裕層に対する調査は重点項目となりそうです。