国税庁は、所得税等の調査についてまとめた「令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」を公表しました。
この調査によると、国税庁が今年6月までの1年間に行った所得税の調査等件数は60万5,077件(対前年比5.1%減)と前年より減少しましたが、申告漏れ所得金額の総額及び追徴税額の総額は過去最高を記録しています。これは、調査対象の選定にAIを活用するなど、効率的に調査を行った結果ということです。
過去最高の金額となった申告漏れ所得金額の総額は9,964億円(同10.2%増)、同追徴課税は1,398億円(同2.2%増)です。
実地調査における1件当たりの申告漏れ所得金額は1,160万円(同4.0%減)です。1件当たりの事業所得の申告漏れ所得金額が高額な業種をみると、「経営コンサルタント」が3,871万円で最も多く、2位は「ホステス、ホスト」(3,654万円)、3位は「コンテンツ配信」(2,381万円)となりました。この他、「くず金卸売業」「ブリーダー」、「焼き鳥」と続いています。
国税庁では、インターネット取引を行っている個人に対して、積極的に調査を実施しています。
シェアリングエコノミー等新分野の経済活動に係る取引を行っている個人に対する調査結果を見ると、調査件数は1,226件。1件当たりの申告漏れ所得金額は1,432万円(同5.0%減)、1件当たりの追徴税額は319万円(同0.3%減)となりました。
調査件数を取引区分別に見ると、ネット通販等587件 、デジタルコンテンツ140件、シェアリングビジネス130件、ネット広告88件、その他281件となっており、新しいビジネスモデルに関する調査を強化している様子がうかがえます。
出典:国税庁「令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」
また、国税庁では、経済社会の国際化に適切に対応していくため、海外投資を行っている個人や海外資産を保有している個人などに対して、積極的に調査を実施しています。
海外投資等を行っている個人に対する調査結果を見ると、申告漏れ所得金額の総額は664億円(同7.2%減)、1件当たりの申告漏れ所得金額は2,568万円(同31.0%減)となっています。1件当たりの追徴税額は649万円となり、実地調査全体の2.4倍と高い数値となっています。
国税庁では「経済社会の国際化に適切に対応していくため、有効な資料情報の収集に努めるとともに、海外投資を行っている個人や海外資産を保有している個人などに対して、国外送金等調書、国外財産調書、租税条約等に基づく情報交換制度のほか、CRS情報などを効果的に活用し、積極的に調査を実施」しているとしており、今後も海外投資等をした富裕層に対する調査は重点項目となりそうです。